「役所広司の表情を凝視するだけで無間地獄に……」三度目の殺人 大塚史貴さんの映画レビュー(感想・評価)
役所広司の表情を凝視するだけで無間地獄に……
是枝裕和監督がオリジナル脚本で構築した世界は、法廷心理ドラマ。
勝ちにこだわる弁護士と、殺人の前科を持ちながら再び殺人をおかし火をつけた容疑で起訴され、犯行を自供する男。この2人を福山雅治と役所広司が演じているのだが、観れば見るほど理論武装がまるで役に立たず、本当に目の前の男が人を殺したのか確信が持てなくなっていく弁護士・重盛の苦悶の表情が印象的だ。
撮影に際しては、1年間以上にわたり弁護士や検事への取材を敢行したという是枝監督。
「人殺しが出てくるような映画を撮ったことがなかった」是枝監督は、「神の目線、全てを知る人が登場しない法廷ものが果たして成立するのか」を検証するため、弁護士陣の協力を仰ぎ、作品の設定通りに弁護側、検察側、裁判官、犯人、証人に分かれた模擬裁判を実施。ここで出てきたリアルな反応や行動などを抽出し、脚本に落とし込んでいったという。
その丁寧な準備には頭が下がる思い。と同時に、自供していた犯行を簡単に否認し、周囲を大混乱に陥らせる男を嬉々とした面持ちで体現した役所には、最敬礼だ。
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