「不言」三度目の殺人 招かれざる客さんの映画レビュー(感想・評価)
不言
この物語で起きた事件の真相は誰にもわからない。フィクションの中での出来事だから、誰にも追求することは出来ない。強いて言うなら、是枝監督の頭の中には存在するのかもしれないが、監督がそれを口にすることは決してないだろう。
真実が語られないまま終わる。結局の誰の言葉のどこまでが本当のことで、どれが嘘だったのかもわからない。考察しようと思えば幾つかの可能性は挙げられるだろうが、そのどれも「そうかもしれない」の枠を出ない。
サスペンスというのは、最後に全てが明らかになるから面白い。これは当たり前だ。相棒にしてもコナンにしても、いつも数式みたいな脚本だと思いながら見ていたが、この作品はその裏をかいた魅力がある。何もわからないまま犯人が死刑になって終わる話。こんな終わり方をされると、逆に真実が気になって仕方がない。結局、なんで社長は殺されたのか。ついでに言えば、会社の食品偽装がどうとかいう問題も、その後どうなったのかは語られない。すべては想像の域を出ない。
正直、こういう作品こそ評価されるべきだと思う。「1+1=2」なのは誰でもわかる。では、「1+A=」だと何なのか。面白く作られたものだから面白い、というのでは当然すぎて、見る前からもう面白いということがわかりきっている。
今回、これといった情報も無しに観に行ったから、まぁ最終的には色々と明らかになるのだろうと思っていたら、本当に何もわからないまま終わった。こんな作品はなかなか無いと思う。外国で高く評価されたのだとしたら、素晴らしいことだと思う。
最後に。このレビューの「印象」のところ。この12項目しかないと、この映画の場合「知的」と、あと強いて言えば「難しい」ぐらいしかチェックを入れられるものがない。人によっては「怖い」とか、あと「寝られる」にも入れそうだが。「暗い」とか「重い」とか「モヤモヤする」とか、そういう項目もあって然るべきではないだろうか。