「終始、監督の手の内で惑わされたままに・・」三度目の殺人 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
終始、監督の手の内で惑わされたままに・・
「三度目」ってだれを?と思いながら、いや、三人目?、それとも、え?、なに?・・・と惑わされてるうちに映画が終わる。
エンドロールが流れ出した瞬間に、やられた!と悔しくなる。まるで、監督にその答えを問い詰めているうちに、裏口から犯人に逃げられた刑事のような気分で。
深みにはまるように事件を洗い出していくうちに、経験していなかったことがあたかも自分の過去であったかのような錯覚に襲われだすと、見ているこっちも、ほんとの「犯人」が誰だかわからなくなっていく。
硝子越しの体面シーンで、三隅と重盛の映像が重なっていくとき、どちらが画面正面で、どちらがガラスに映ったものなのか、わからなくなっていく様は、まさにこちらを心理的に追い込んでいく手法としては抜群だと思えた。
解釈はそれぞれあり、それぞれが答えでもあろうし、それぞれが騙されいてもいよう。法廷で繰り広げられる駆け引きを前にすれば、真実なんてもうどうだって構わなくなってくる。しょせん、互いの利益を勝ち取るための戦術的な知恵比べでしかない。そこに、真実の存在は無意味なのだ。
人によっては不親切な映画だろう。僕もわからない部分が多々ある。だけど、それは批判ではない。幾通りにも解釈ができるがゆえに、数日たった時にふと、あ、もしかしてあれって!!と急に思いつくことがある「快感」もある。長い時間味わえる映画だと思う。
しかし、広瀬すずのポテンシャル、すごい。
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