「3日は悶々とする映画」三度目の殺人 flying frogさんの映画レビュー(感想・評価)
3日は悶々とする映画
ここ数年で一番の映画。
とにかく役所広司が凄い。接見室という動きのないシーンが多いのに、一瞬たりとも目が離せない緊迫感を持つ映画。
「真実」は明らかにされず、張られた数々の伏線も、回収されないまま。
この物語での「真実」など、しょせんは犯人しか知らない、という現実そのままの"真実"を弁護士の重盛と同じように観客も思い知らされる。
そして咲江の「誰を裁くのかは、誰が決めるんですか?」というセリフがこの映画のメインテーマなのだろうけど…
観賞後、明かされない真実を悶々と考え続ける映画だな、これは。
「三度目の」というタイトルの意味を考えると、「真実」は2~3の候補に絞られるのだけど、故意にその中のどれかを決められない描かれ方をされている。
撮影に入ってからも何度も改稿されたというシナリオに、一分の隙もないから、狙い通りに悶々とさせられる映画に仕上がったのだろうな。
映像も素晴らしい。
終盤、重盛の顔を接見室のアクリル板に鏡のように反射させることによって、対面する重盛と三隅を同時に見せる撮り方、接見室や法廷の印象的な光の使い方、特に三隅や咲江への光の当て方、いずれも「映像」というものを知り尽くした人たちが知恵を振り絞って表現しようとする迫力を感じる。
「海街diary」で是枝監督ってなんて繊細な映像を撮る人だ、と思ったが、本作ではさらに映像から目が離せなくなっている。(撮影の瀧本幹也の力量も大きいのだろうが)
役者も役所広司だけでなく、みな素晴らしかった。
広瀬すずは、観客の判断を迷わせるという意味で、監督の狙いどおりの絶妙の演技。
福山雅治も、他の映画では失礼ながら何を演じても「福山雅治」にしか見えなかったのだけど、「そして父になる」と本作では「良い役者じゃん」と素直に思える。
木村拓哉も、是枝作品に出れば、ちゃんと「役者」になれるのだろうか…?(笑)
ちょっと見てみたいかも(笑)