「ラドクリフは軍人じゃない」スイス・アーミー・マン ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
ラドクリフは軍人じゃない
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タイトルの意味がわかっていなかったせいで、ダニエル・ラドクリフは軍人の死体なのかと思っていたが、そんな訳もなく。
十徳ナイフ=スイスアーミーナイフ→スイスアーミーマン、なのだ。いわばレインマン的な。
わりと王道のイマジナリーフレンドものなので、ポスターのインパクトのせいでひねりの効いたサバイバルものを期待していく(私だ)と拍子抜けする。
惹句の「青春・サバイバル・アドベンチャー」は語順が成分と正確に比例しているわけで、つまり青年期の心のつまづきがメインのお題。
それにしては冒頭、タイトルまでのパンチが強すぎるんだよなあ…
ありていに言ってしまえば、好きな女の子に話しかけることもできない自分を責めるあまり、とうとう自殺を試みるほどに追い詰められた主人公が、(無知で無邪気だったころの)自分の分身である喋る死体と出会い、ともに冒険をしながら、失っていた色鮮やかな世界を取り戻し、現実に立ち向かう力を獲得していく話、ということになる。
いわば、内向的な青年が抑うつ状態から回復する過程の心象風景を漂流物、死体という仕掛けを使って描いた一種のファンタジーなわけだ。
私の読解力が貧しいためラストまでそれが汲み取れず、リアルなの? ファンタジーなの? と、はっきりしないまま観てしまったので、正直中盤の前半部でたるく感じる場面もあった。
登場人物がほぼ2人で、風景や状況の変化に乏しく、音楽の使い方含めてシーンの盛り上げ方がやや単調なせいもあるとは思う。
もう1回観たら、色んな場面でシンプルに泣けるのかも知れないなあ。
それにしてもダニエル・ラドクリフは死体役が本当に似合う。
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