「凶悪なテロに立ち向かった人々の群像劇」パトリオット・デイ といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
凶悪なテロに立ち向かった人々の群像劇
以前他の映画をレンタルDVDにて鑑賞していた時に、映画本編の前に流れていた予告編が面白そうだったので鑑賞しました。「2013年に実際に起こったボストンマラソン爆弾テロ事件を基にした映画」という程度の事前知識です。事件についても、ニュースで流れていたのを見た程度で詳細は知らない状態でした。
結論ですが、非常に面白かったです。
こういう実話を基にした映画は多くありますが、実話ゆえの脚色不足で盛り上がりに欠けてしまったり必要以上に悪人を悪人として描きすぎている作品が多い印象があって、脚色や演出の仕方によって作品の評価が大きく変わってしまうことが多いです。しかし本作は(不謹慎ですが)映画的な盛り上がりもあり、尚且つ実話に忠実に描かれているように感じます。「ラストのインタビューシーンは不要だ」という否定的なレビューも多いようですが、私は肯定派です。あのシーンは絶対必要です。
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2013年4月に開催されたアメリカ三大市民マラソン大会であるボストンマラソンで事件は起こった。大会の最中にゴール付近で2度に渡る爆発が起こり多くの死傷者が出る爆破テロ事件が発生したのだ。警備業務で現場に居合わせたボストン警察のトミー・サンダース(マーク・ウォールバーグ)は懸命な救命活動で負傷者を救い、その後の捜査にも加わることになる。
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この事件についてWikipediaで調べてみると、映画の描写が「映画内の演出かなと思ってたら実際に起こったことだった」って箇所が多くて驚きます。犯人兄弟の弟が、逃走のためにベンツSUVを運転したら兄を轢いてしまって亡くなったのも事実でした。
不謹慎な表現になってしまいますが、そもそも実際に起こった出来事が創作のような話なので、実話ベースで作っていても「映画的」なストーリーに感じられるんじゃないかと思います。
ただ、大きな部分でフィクション(脚色)が混じっています。登場人物のほとんどは実在の人物ですが、主人公のトミーだけは架空の人物なんです。捜査に参加したボストン警察の大勢の警察官を体現するキャラクターとして登場している印象ですね。これは本作の一番大きなフィクション部分であり、そして実在するボストンマラソン爆弾テロを映画化するにあたって一番良かった脚色だったと思います。
捜査現場の緊張、犯人への憎しみ、被害者の感情、普段は犬猿の仲である警察とFBIの共闘など、観ていて感情が高ぶるシーンがいくつもありますし、これが「実際に起こった出来事」だと考えると何とも言えない気持ちになります。
批判的なレビューをしている方の中には「ラストの被害者のインタビューが長い(不要)」と言っている方が結構見受けられました。しかし私はラストのインタビューは絶対入れるべきシーンだったと思っています。
これがもしエンタメを重視した映画であるならばラストのインタビューシーンに対して「興ざめだ」と感じるかもしれません。しかし本作はラストの展開を観てもエンタメ映画というよりは過去の悲劇を忘れないため、犠牲者の追悼をするため、そしてアメリカという国に住む人々の可能性を描くための映画であるように感じました。あんまりエンタメ性は高くない作品ですので、ラストのインタビューシーンも「これはフィクションではない」とまざまざと見せつけてくれるような演出になっていて私は好感を持ちました。
凶悪なテロに屈せず戦い続けた人々の映画です。本当に素晴らしい映画でした。
オススメです!!