ヒトラーに屈しなかった国王のレビュー・感想・評価
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映画として面白いかは別
史実を基にしているので、
登場人物たちについてえらいな、とか
大変だろうな、などは思うんですが、
え、これで終わり?という絞め方なので
映画として面白いかどうかといわれると微妙です。
勉強にはなる。
ナチスドイツに脅されてたんだろうとはいえ
やばい局面に内閣総辞職って
まるでどこかの国を見ているようです。
開戦するか否かは一人の人間が背負うには
あまりにも責任が大きすぎる。
恐れによって、あるいは感情に流されての
選択ではなく、
あくまで原理原則に従って民主主義のために、の
決断は、長い目で見れば国民的にも
正しいと支持はされるだろうが、
戦後もご本人のあれでよかったのだろうか、という
悩みはつきなかったのではなかろうか。
それにしても、
日本の国会議員で胸を張って
民主主義で選ばれてるのだから
勝手なことはできないのだと
いえる人はどのくらいいるのだろう。
むなしくなりました。
多くの若者の命の消失に直結する困難な重い王の決断、それがノルウェーの誇りとなった
エリック・ポッペ監督による2016年製作のノルウェー映画。
ノルウェー映画は多分初めて。ナチス軍による攻撃や首都オスロからの北方向への政府の断続的移動、国王の降伏拒否の決断等、史実に忠実らしく、欧州歴史を理解する上で勉強になった。
後、強国がいきなり攻撃を仕掛けてくる恐怖、逃げても逃げてもどんどん敵が迫って来る恐怖、日本が近年経験したことがない恐怖、それがウクライナのこともあり身につまされた。
そして、ノルウェーの平和を求め講和受け入れを、敬愛するノルウェー王に提案するドイツ公使の努力もきちんと描かれており、好印象。実兄はドイツに即時降伏したデンマーク王、息子の嫁はスエーデン王族という欧州王族の家族像もかなり興味深いものがあった。
そして、何よりも腰を落とした、しっかりとした国王の描写に心打たれた。命を落とすことになるかもしれないが、それでも祖国のためにドイツ公使に合う決断をする。そして、自分の判断が多くの若者の命の消失に直結する困難な重い決断を行い、それを内閣に伝える。映画では詳しく述べていないが、その後、ドイツ軍に全土蹂躙されて国王らも英国に逃れることになる。何という過酷な決断。天皇陛下の無条件降伏受け入れ決断を、思い浮かべてしまった。
重い映画なれど、王の孫達とのふれあい、少年兵の活躍等も見せ、祖国の誇りをエンタテイメントとして仕上げた監督等、製作者達の力量に、感心させられた。
原案はアルフ・R・ヤコブセン、脚本はエリック・ポッペ、ハーラル・ローセンローブ=エーグ ヤン・トリグベ・レイネランド。
撮影はジョン・クリスティアン・ローゼンルンド、編集はアイナル・エゲランド。
音楽はヨハン・セーデルクビスト。
出演は、イェスパー・クリステンセン (ノルウェー国王、007/カジノ・ロワイヤル等)、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン(王太子)、カール・マルコヴィックス (ドイツ公使)、カタリーナ・シュットラー -(ドイツ公使夫人)、トゥヴァ・ノヴォトニー(王太子妃、スウェーデン王族)。
ユリアーネ・ケーラー -(ドイツ公使館秘書)、アルトゥル・ハカラフティ (ドイツ語を話せる少年兵)。
アナ雪にも出てくるオラフ
立憲君主制とは何かという点で興味深く自宅鑑賞。1940年4月9日から11日までの3日間をスリリングに描いていました。「イギリスから守ってやるから、国を引き渡せ」というのがナチスドイツの要求で、議会は混乱、あっという間に首相が辞任し内閣は解散するかとも思われたが、ドイツのクヴィスリングの傀儡によってクーデターが起こる。
とは言っても、映像では一切見せない手法のため、誰もがラジオに耳を傾け、有事の際の情報の無さの恐怖を感じる演出だった。今の発達した情報社会では考えられないのかもしれませんが、侵略戦争を起こす国の恐ろしさを見事に描いてました。
政府が実権を握っているはずなのに、混乱し、機能しなくなれば、最終的決断は国王にゆだねられる立憲君主制。戦争の犠牲者を出さないためにも早く国を引き渡してほしいドイツ側の公使ブロイアーの焦る姿も見事に描いていました。結構ぐずぐずしてたのに、ヒトラーからの直通電話を受け取り、心酔してしまったようにも見て取れた。いざ国王に謁見すると、陽の陰になった国王ホーコン7世の神々しさに圧倒されたのか、思うように説得できない。密室での条約なんて公使ごときじゃ相手にならん!と言われたらどうしようと、おどおどしているようにも見えるのだ。
そんな国王が取った選択は「すべては祖国のために」。ノルウェー史上初の国民に選ばれた王様であるため、民意を尊重し、ここで決定してしまったら民主主義ではなくなると言い放ったのだ。気持ちいいお言葉。戦争の犠牲者は出るだろうけど、ナチスに服従したところで戦争に駆り出され犠牲者は出るはず。選択が間違っていたら、即王位を退くと断言するのだ。
神格化されてるわけでもない国王の立場。あくまでも民意の代表であるという立場なのがユニークなシステムだった。どちらかというと、戦後日本の天皇制と似ているのがわかり、ちょっと勉強になった。
素晴らしい
ホーコン国王は苦難の決断を迫られるが、主権国家を貫き、最後まで降伏しなかった。この作品で印象的なのはドイツ行使が最後まで平和的な解決に向けて努力をする姿をしっかりと描いている点が高く評価される点だと思います。
ちょっと「国王の決断」を持ち上げすぎ
今日の3本目はナチスドイツに侵攻された1940年4月のノルウェーの政治・外交を描いたドラマ『ヒトラーに屈しなかった国王』。
ドイツ軍が陸戦でも北上を進めてからのラスト45分くらいは目が離せないけれど、その前まではところどころ眠くなる退屈なシーンも多い。
いくつか気になった点。
1) ドイツ公使との会談後の国王の決断について、作品ラストのキャプションでは「国政に介入してまでの国王の決断は、主権国家ノルウェーの民主主義の象徴として記憶される」みたいなことが書かれていたけど、「主権国家の象徴」ならわかるけど「民主主義の象徴」とは言えないんじゃないかと思う。
2) 当時のヨーロッパをめぐる情勢はよくわからないし、まだ米国も静観している頃のことでもあり、そしてこの作品で描かれている交渉劇はわずか3日間のことなんだけれど、それでもノルウェーはここで対独の2国間交渉というフレームのみでの検討になってしまってる時点で、良くなかったんじゃないかと思う(他に巻き込みうる他国がいるかどうかは調べないと)。
逆に言うと、ドイツは最初に衝撃を与えて電撃的に2国間で話を固めるというのが戦略だったってことなんだろうな。
準主役のドイツ公使の人間的葛藤というサブテーマもこの作品にはある。良心はありつつ、力関係では軍に劣り、ヒトラーに対しては隷従せざるを得ない小市民として、ブロイアー公使という人物はよく描けている。
日本とノルウェー
史実に基づいたフィクションではあるが、この映画を観る前と観た後で、ノルウェーに対するイメージががらりと変わった。
同時に、(個人的に右寄りでも左寄りでもないが)同じ立憲君主制を敷く日本という国、天皇陛下という存在について、深く考えるきっかけになった。
時系列に話が進むので歴史モノを観ているという印象を受けつつも、ハンドカメラで撮られた臨場感溢れる映像や、全編に渡る国の危機という緊迫感により、最後まで目を離すことができなかった。特に、ドイツ軍の艦船が突如霧の中から現れたシーン、ドイツ軍を待ち伏せして銃撃戦になるシーンは手に汗握った。
一方で、一番印象に残ったシーンは、祖父であるホーコン7世が孫たち家族と離ればなれになるところだった。国の一大事に翻弄される王族一家の心理描写も非常に丁寧になされており、もし自分が同じ状況に置かれたら、愛する人のために、祖国のために、家族と離ればなれになることができるだろうかと考えた。
ホーコン7世は、最後まで「祖国のため」という姿勢を貫いていた。自分だけでなく、家族や国民を犠牲にしようとも、祖国のことを第一に考えた。この映画で描かれた3日間の後も、戦争が終わるまで、ナチスドイツに抵抗を続けた。
ノルウェーでは2016年に公開され、社会現象になるほど大ヒットしたというが、ノルウェー国民にも、きっと王の想いが引き継がれているのだろう。自分を犠牲にしてでも、祖国を守ろうとする姿勢。もしこの時代に家族同士、国民同士で分裂していたら、国は滅びてしまっていたかも知れない。
日本も同じく国のトップ?がいるわけだが、ノルウェーとは何かが違うと感じる。もし日本が同じ状況に置かれたら、その時の天皇陛下はどう決断を下されるだろうか、と想像する。同じように国民のために動いてくださると思うが、今は政治への介入が厳しく制限されているから、結果日本が応戦するか、降伏するか、わからない。
また、最近話題の内容だが、例えば、周りの国から軍事的圧力を受けてどうしようもなくなったとき、日本の政治家たちは天皇陛下に助けを求めるだろうか。何だかアメリカに助けを求めそうに思うのは気のせいか。やはり日本は、ノルウェーとは似て非なる存在なのだろうか…。
余談だが、アナ雪はノルウェーがモデルらしいので、皇太子の「オラフ」という名前は絶対忘れなそうだ笑。彼は、父とはまた別に国民の目線で庶民的に生きた、すばらしい王だったとどこかで読んだ。ホーコン7世と彼と、どちらの主張が正しいとかはないと思う。ホーコン7世の兄が王だったデンマークはナチスに降伏したが、それも間違いではないと考える。
そして、全体を通してホーコン7世は無言を貫くシーンが多いのだが、自分はまだ年老いていないし子供もいないので、国王が何を考えてるのかよくわからない部分が多かった。どちらかというと、子供という観点、守られる立場から観てしまっていたように思う。
早く逃げなきゃいけないのにもう一度家に戻る国王を「また帰ってこれるよ」と優しく諭す皇太子…自分はそうできないかもと思った。「早く来て!」と少しイライラしてしまった。子を持ったり歳をとったりすると変わるんだろうか。
映画の題名からは、どんなことにも折れない屈強な人物かと思ったが、がんこで腰も悪いしよろよろしているおじいちゃんで、最初は「思っていた雰囲気と違うな」と思ったが、移動ばかりで疲れていても、ここぞというときには声を張り胸を張り堂々とする場面を観て、ここ数年話題となった天皇陛下の退位についておもいをはせた。年老いたとしても、ホーコン7世は芯はものすごく強い人だったのだろうと想像した。
心残りは、交渉人が報われずとても不憫だったこと。フィクションなのかも知れないが…。
最後が字幕で片付けられていて驚いたが、決断の3日間にフォーカスを当てているということで、納得して会場を後にした。
非常に良い経験をさせていただいた。
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