「解剖したがる博士と猫を食べたがる少女」ディストピア パンドラの少女 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
解剖したがる博士と猫を食べたがる少女
新しい感覚のゾンビ映画と言ってしまえばそれで済むのだが、人間に近く、高い知性を持った少女がやがて来る第二のパンデミックを見据えて新世界で生きようとする哲学的なゾンビ映画。
知性を持った少年少女に授業するという画期的なゾンビ世界。非感染者の子供がいないためなのかと思っていたら、まるでマッド・サイエンティストのようなキャロライン博士が解剖してワクチン生成しか考えてないという檻の中の実験体でもあったわけだ。特に気に入られたのが優秀なメラニー(セニア・ナニュア)という黒人少女。人類を救うためとは言いつつも単なるエゴイストにしか見えない狂気の科学者といったグレン・クローズ演ずるキャロラインが怖い。
やがて“ハングリーズ”によってフェンスが破られ、基地内の人々が次々とゾンビ化する中、メラニーと教師ヘレン・ジャスティノー(ジェマ・アータートン)、キャロライン博士、パークス軍曹(パディ・コンシダイン)たちがビーコンの基地を目指して行動を共にする。
終盤、自分が助かりたいとエゴをむき出しにしたキャロラインがメラニーを解剖しようと説得するが、メラニーは思ってた以上に学習し、人類は滅亡しても仕方がないと考える。彼女は胞子に火を放ち、世界の終焉を早めるのだった。
絶望したパークスの最期がとてもいい。拳銃をメラニーに渡し、人間として死にたいと彼女に託すところは人間の尊厳を感じるシーン。超能力を持ったミュータントが新世界を作ろうとする、よくある話をゾンビに置き換えたような内容でもあり、共生とかなんとか言っても、結局は無理なんだよな~と悲観的に見ていたら、最後にはとんでもない展開。移動基地に隔離状態になったジャスティノーだけが人間のまま、序盤と同じようにゾンビキッズに授業しているのだ。笑ってもいいのかもしれないラストシーンは印象に残る・・・