「.」IT イット “それ”が見えたら、終わり。 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。相変わらずよく判らない邦題(副題)附き。原作の雰囲気やテイストを損ねず、忠実且つ丁寧な描写で進行し、好印象。しっかり怖がらせる造りになっているが、ややサービス過剰気味で失笑してしまう箇所も有り(これも原作っぽいと云えば原作っぽい)。ラストもスッキリしていて悪くない。原作者S.キング執筆時の総括的な一作なので、これ迄映像化された数々の作品群(特に執筆は後だが、先に映画化された『ドリームキャッチャー('03)』と同じフォーマットのプロット)が浮かび、どうしても既視感が付き纏ってしまった。70/100点。
・ワーナーブラザーズやラットパック等、オープニングでの製作会社等のロゴコールは孰れも小雨降る曇り空のバックに濁った色調で表示されており、ニューラインシネマ時の右下には、本作のキービジュアルの一つである小さな赤い風船が添えられている。ラストのスタッフクレジット時には、続きを暗喩させる嗤い声も聴こえる。
・長くやや冗長気味が持ち味の原作の詰込み感が、然程気にならなずスマートに纏めていると思ったら"Chapter One"とラストに出た。尚、続編となる"Chapter Two"は'19年9月6日リリース予定で、監督及び(共同)脚本のG.ドーベルマン、“ペニーワイズ”のB.スカルスガルド等の続投がアナウンスされている。
・先に映像化されたTVドラマ版『IT('90)』と較べると、物語の辿るエピソードやディティール、或いはB.スカルスガルド(TV版ではT.カリー)演じる“ペニーワイズ”の衣裳や仕草等、本作の方が原作により忠実である。亦、月並み乍ら同じ原作者の『スタンド・バイ・ミー('86)』が好きな方々にはそれなりの評価を得られるのではないだろうか。
・W.オレフ演じる“スタンリー(スタン)・ユリス”が怖れる絵の中の女は、監督の前作『MAMA('13)』に登場するキャラクターに似ている。亦、スライドからB.スカルスガルドの“ペニーワイズ”が飛び出してくるシーンは、狂犬が飛び出す同原作者の『サン・ドッグ』からの引用だと思われる。ちなみにこのシーケンスで使用された航空画像は。カナダのオンタリオ州ポート・ホープのウォルトン・ストリート近郊である。
・続編のキャストで唯一続投が決まっている“ペニーワイズ”のB.スカルスガルドはこのキャラクターを演じる為、様々な作品を参考にしたと云うが、中でも同じ原作者による『シャイニング('80)』に大きなインスピレーションを得たと云っている。彼が奇特なキャラクターを演じるに当り、カウンセラーを設置する等、精神衛生面も製作中は考慮されたらしい。ちなみに原作版で“ペニーワイズ”の本名は、“ボブ・グレイ "Bob Gray"”とされている。
・様々なシーケンスでCGIは使われたが、予定されていた“ペニーワイズ”が斜視や左右の瞳をあちこちバラバラに動かす眼球運動は、撮影現場で演者のB.スカルスガルドが特技として出来ると判明し、CGIに頼らずに済んだらしい。亦当初は“ペニーワイズ”のメイキャップに約五時間を要したが、スタッフも徐々に熟れて行き、クランクアップ時には約二時間程度迄、短縮出来たと云う。
・ストーリー上、登場する「27」と云う数字に本作は関連が深く、TVドラマ版『IT('90)』の27年後にリシースされた。このTV版で12歳時の“ビル・デンブロウ”を演じたJ.ブランディスは'03年11月に27歳で亡くなっている。本作の(“ペニーワイズ”のB.スカルスガルドは自身の27回目の誕生日[TV版が放映された年'90年8月9日]の約一箇月後の)米国公開は、2017年9月8日で使用されている数字(2+0+1+7+9+8)の和は27となる。更に続編公開は、2019年9月6日を予定しており、こちらの数字の和(2+0+1+9+9+6)も27である。
・物語は1988年10月~始まるが、撮影は'16年6月27日に始まり、原作者Sキングの69歳となる誕生日の前日'16年9月20日に完了した。ちなみに原作は'86年「9月」に上梓、本作は'17年「9月」8日に公開、そして原作者Sキングは'47年「9月」21日に生まれた。
・鑑賞日:2017年10月29日(日)