「僕たちは“それ”を乗り越え、成長していく」IT イット “それ”が見えたら、終わり。 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
僕たちは“それ”を乗り越え、成長していく
全世界でホラー映画としては異例の大ヒット、日本でも21世紀になってから公開されたホラー映画では洋邦併せて最高の20億円超え。
また、スティーヴン・キング原作作品としても最大のヒット。
昨年の秋大いに話題を呼び、我が地元の映画館でも洋ホラーが久々に公開されるかと期待したが結局公開されず、レンタルを待っていた。
『IT』はこれが初見…ではない。
その昔、TVムービー版を見た事がある。
と言っても今となっちゃあほとんど詳細覚えてないが、なかなか面白かったのはぼんやり覚えており、何よりティム・カリーが演じたペニーワイズが強烈インパクトであった。
これが初の“映画化”。初見のつもりで鑑賞。その感想は…、
結構賛否分かれてるようだが、個人的には満足!
洋ホラーの話題作としても、『死霊館』以来の良作!
冒頭、主人公の少年のトラウマとなる弟の事件。
どんよりとした雨の天候、溝の中から“それ”が現れ、いきなり異様な雰囲気に包まれる。
別の少年が図書館の中で首無し焼死体(勿論“それ”)に襲われるシーンは気に入った。
血塗れのバスルームは画的にも目を引く。
フィルムが自動的に切り替わり、“それ”の顔が浮かび上がるシーンは秀逸!
“井戸の家”や地下の陰湿さ、おどろおどろしさ。
何度かビクッ!とかドキッ!とかさせられたけど、これはメチャ怖いというより、ゾクゾクとした薄気味悪さ。
それを非常に楽しませて貰った。
また、所々B級チックなホラー演出もあり、それがまたB級作品を愛するキングの味がした。
ホラーの俊英、アンディ・ムスキエティが『MAMA』に続き、またまた上々のホラー演出を披露してくれた。
レビューを見ると期待外れの声も多い。
もっと怖いと思ってたとか、もっと正統派のホラーと思ってたとか、意表を突かれたのが『スタンド・バイ・ミー』的なノスタルジックな青春ドラマ。
実はこれが重要な要素の一つだ。
学校ではいじめられ、家にも居場所が無い7人の少年少女“ルーザーズ・クラブ”。
彼らのひと夏の出来事、友情、初恋…。
すでに製作が伝えられている彼らが大人になった続編が公開になった時、この青春ドラマの部分が大きな意味合いや味わい深さとなるだろう。う~む、巧い作り方だ。
それもあるが、ブリーフ姿で並んだ時の愛おしいへっぽこさ!
こいつらが可愛いよ!
だからその分、いじめっこの憎々しさが際立つ。もはやいじめと言うよりゾッとする犯罪だ。
しかしそのいじめっこのリーダーも、ルーザーズ・クラブと似たようなものを抱えている…。
神出鬼没、変幻自在。
やはり圧倒的な存在感を放つペニーワイズ。
演じたイケメン俳優ビル・スカルスガルドの怪演はティム・カリーに全く負けてない。
舞台の架空の町デリーに27年おきに現れ、子供を喰らうピエロ姿の怪物。
大人には見えず、子供にしか見えないこのペニーワイズは、一体何なのか…?
言うまでもなく、子供たちが抱く恐怖のメタファーでシンボルだ。
子供が犠牲になった事件、孤独、いじめ、苦悩、親の抑圧、トラウマ…。
具現化して子供たちを襲う。
彼らは子供だ。当然怖い。恐ろしいほどに。
しかし子供たちは、その恐怖に打ち勝ち、乗り越えなければならない。
変な例えだが、誰だっていつしか一人で夜トイレに行く事が出来るようになった。
いつまでも恐怖に負けていられない。
僕らが一つになれば、恐怖に勝てる!
いじめられっこたちが勇気を持って立ち向かっていく様、成長していく様がツボを抑えて描かれる。
本作は不気味なホラーと言うより、実は非常に真っ当な少年少女たちの青春成長物語なのかもしれない。
そして彼らが大人になった時…。
2019年に公開予定の27年後の続編がどう展開するか楽しみだ。
でもその前に、TVムービー版を久々に見たいなぁ~。ティム・カリーの怪演もまた見たいし。