「"2+0+1+9+9+6"="27"なのである。怖っ~。」IT イット “それ”が見えたら、終わり。 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
"2+0+1+9+9+6"="27"なのである。怖っ~。
今年9月に全米公開されるやいなや、ホラー映画史に残る金字塔「エクソシスト」(1973)を抜き、すでに全世界で約700憶円を超える特大ヒットを飛ばしているホラー映画の日本上陸である。
本作はスティーブン・キングの代表作で、1990年にテレビ映画化(DVD化)されているものの、劇場映画になっていないことで有名だった。なぜ映画化がままならなかったか。それは文庫本で4冊、1990年版ドラマも3時間を超える大作というところに尽きる。
なので、これはネタバレというより知っていておいた方がいい情報として、本作はエンドロールで"Chapter 1"と表示されて終わる。ヤバっ。
米メイン州デリーで起きた児童失踪事件。その犯人は、子供たちだけが見える殺人ピエロ、"ペニーワイズ"の仕業であった。ピエロのペニーワイズは、子供たちひとりひとりの怖いもの="それ(it)"に変身するのだ。"loser"(いじめられっ子)である、7人の子供たちは一致団結して、ペニーワイズの恐怖と対峙する。"Chapter1"はここまで。
原作では最初の事件(1958年)の27年後、1985年にペニーワイズが再び現れる。今回の映画化では、子供時代の設定が1988年~89年になっているので、ペニーワイズは、その27年後である現代に蘇ることになる。ここからが"Chapter2"になるだろう。
ホラー映画といっても、子供向け"肝試し"レベルで、それほど怖くない。現実的にはツッコミどころ満載。"これはコメディか"と思ったり、少年の冒険ジュブナイル的には、同じキング原作の「スタンド・バイ・ミー」(1986)みたい・・・という感想になるのは当然。
それはスティーブン・キングの思うツボ・・・なのである。
いじめられっ子たちの恐怖の対象は、"いじめっ子"や"お化け"であったり、"失踪した自分の弟"であったり、"家庭内暴力をする親"であったり、得体の知れない大人たちの理屈や言動すべてである。
大人になれば忘れ去ってしまう、お化けの正体は、大人の理不尽な言い訳だったり、子供に隠しておきたいことだったりする。キングの書く恐怖は、思春期の子供たちなら誰しもが持つ不安にある。
後編では、大人になった、"かつての子供たち"が田舎町に再集結して、"それ"に立ち向かう。
ホラーとして本作が怖くない人は、"あなたが大人になってしまったから"である。本作はホラー映画であってファンタジックなジュブナイルだ。さて、"Chapter2"はどうなるか。
"Chapter2"の全米公開は、27年後・・・ではなく、再来年の2019年9月6日と発表。なんと、"2+0+1+9+9+6"="27"なのである。怖っ~。
設定を80年代後半にしたことで、この映画自体が80年代ホラーへのオマージュになっていて、ホラー好きの細かな仕掛けがいっぱいある。「グレムリン」(1984)のポスターや、映画館で上映されているのは、「エルム街の悪夢5」で時代考証(1989)もバッチリ。洗面台から血が吹き出すところは「エルム街の悪夢」(1984)だ。
(2017/11/4 /TOHOシネマズ新宿/シネスコ/字幕:野口尊子)