劇場公開日 2017年10月13日

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「人形の棲む家」アナベル 死霊人形の誕生 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人形の棲む家

2017年10月15日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

単純

大ヒットホラー『死霊館』に登場した顔面凶器人形
アナベルの恐怖を描いた前作『アナベル 死霊館の人形』。
前作はある夫婦が引き取ったアンティーク人形に、
カルト宗教信奉者のアナベルという女が邪悪な存在を
吹き込むという展開だったが、今回は、その人形
そのものが制作された経緯が明かされる。

「え、じゃあ造られた時点ではそれってただの
 人形じゃん。別に怖くないぢゃん(顔以外)。」
と考えていますね、アナタ。けどですね、そうは
問屋(=ワーナーブラザース)が卸さないのですね。

...

舞台は1957年。
腕の立つ人形職人であったマリンズとその妻は、
自分たちの大きな邸を孤児院として解放する。
修道女と6人の少女が邸へ引っ越してくるが、
その邸には邪悪なあの人形が潜んでいた……
というあらすじ。

見所は、前作よりも悲劇性の増したシナリオだろう。
冒頭の流れで、あの人形が邪悪になった経緯は
全ての真相が明かされる前からある程度察することが
出来ると思うが、それでも悲しい物語。
どうにもならないことをどうにかしようと、
歪んだものにまで縋り付く人の性(さが)。

実質的な主人公である孤児のジャニスとリンダの
繋がりも切ない。実の姉妹のように仲の良い二人。
ポリオで足を患っているジャニスをリンダは気遣うが、
ジャニスは自分のせいでリンダが他の孤児たちの
輪に入れていないと引け目も感じている。
それでも、「いつまでも一緒にいよう」という想いは同じ。
リンダとジャニスが交換する人形が、物語の最後で効いていた。

冒頭ののどかな描写を恐怖の伏線に使うのも好きだし、
あとは前作にどう繋がるか?という点についても、
「あ、そこであの人がそう繋がるのね!」と
予想外にキレイな着地をみせてくれます。

...

しかしながら……前作よりスコアを下げての3.0判定。
恐怖や物語のクオリティは『死霊館』や前作より
落ちていると感じるし、ついでに言うと監督の
前作『ライト/オフ』の方が出来は良かったかな。

まず、物語の悲劇性が増した点は好みなのだけど、
その悲劇性を感じさせる描写自体は丁寧では無い。
なんというか、多数登場するキャラクター達を
使いこなし切れてない感じが強いんよね。
マリンズ夫妻の迎える結末は、あんなモブキャラみたいな
雑な最期ではなくもっと悲劇的で良かったと思うし、
ジャニスとリンダ以外の孤児少女4人のうち
3人はいたかいないか分からないくらいの存在感。

そして恐怖演出。
マペット・ドールハウス・おもちゃの銃・
エスカレータ・エレベータ・井戸・かかし……
恐怖演出のために多彩なギミックが登場し、
その使い方も悪くはないけれど、鑑賞後に
思い出して怖さを感じるほど冴えた演出ではない。
(『ライト/オフ』っぽいシーンもあるが、なんか粗い)

なによりギミックが多彩でも恐怖シーンの流れがほとんど
“予兆→沈黙→沈黙→いきなりドカン!” のワンパターン
なのが大いに痛い。後半に入る頃には“ドカン!”
への身構え方が分かってきて、恐怖が薄れてしまう。

そもそも個人的にはいきなり“ドカン!”の安易な
脅かし方よりももっとじわじわした方が好みで、
例えば序盤、ピンぼけのまま背後から忍び寄ってくる少女や
何度閉めても開け放たれるクローゼット等は怖面白かった。
ああいうシーンをもっと上手に織り交ぜてほしかったな。
あ、相変わらず座ってるだけで怖いアナベル人形ちゃんは
流石の貫禄でした。うん、こっち見ないで。

...

以上!
これまでの『死霊館』シリーズと比べるとイマイチだが、
ウィンチェスターハウスのように恐怖の拡張工事を
続けるこのシリーズのファンの方はどうぞご鑑賞を。

ちなみに今回、エンドロール後にちょっとだけ
映像があります。今度は『死霊館 エンフィールド事件』
で登場した“彼女”のスピンオフが出るらしいので、
こっちも楽しみですねえ。ナン(Nun)ともはや。

<2017.10.15鑑賞>
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余談:
前作のレビューでも書いたが、
『死霊館』シリーズは実話が元になっており、
アナベル人形も実際に存在しているそうな
(超常現象研究家ウォーレン夫妻が現在も保管中)。
でも、実際のアナベル人形はあんな顔面凶器人形
ではないんですね。映画の終盤でとてもファンシーな
赤毛の人形が登場するが、アレがソレ。
登場した瞬間に思わず吹き出してしまった。

浮遊きびなご