「恐るべき、”ダンサー” という世界。そしてそこからの脱却。」ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
恐るべき、”ダンサー” という世界。そしてそこからの脱却。
19歳と若くして英国ロイヤルバレエ団のプリンシパル(バレエ団の主役しかしないダンサー。1割程度しかいない) となった、セルゲイ・ポルーニン氏の、若き半生のドキュメンタリー。
旧ソ連で生まれながら、なんでBBCが作成してるのだろうと思ったが、海を渡って英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルになったからだったんだな。納得。
小さい頃からバレエを続け、ケガをしないように他のことはなるべく避けてバレエだけを続けているうちに自分の中に悪魔が芽生え、プロになるしかないと考えるようになり (劇中独白)… 。
旧ソ連の3大バレエ団のあるキエフの学校に入り、幼いながらに 「遊びは終わりだ」 と自覚する主人公。
明らかに彼は、バレエダンサーとして大成功した。小さい頃から才能を見せていた主人公を、キエフの学校に入れ幼少期に厳しく対応したのは、母が言うように 「教育」 だったのか、それとも彼が言うように 「支配された」 だったのか? 父や祖母が他国にまで出稼ぎに行ったのは、母が言うように 「父の役割」 だったのか、それとも彼が言うように 「(俺と)離れ離れにした」 だったのか?
「僕が、バレエダンサーになって、家族をまたひとつにする」 と心に誓っていた主人公にとって、両親が離婚したことは、大きなトラウマだったのだろう。それは自分のせいでもなく、両親のせいでもないとわかってはいるのだが、考えると自分の無力さを感じさせられるような出来事だったのだろうな。
英国ロイヤルバレエをやめ、ロシア国立モスクワ音楽劇場のプリンシパルをも捨て、映画でみせる最後の演舞 「Take Me to Church」 の迫力。YouTubeでも見られる映像だが、これはスクリーンで観てほしい。そして、ひとつひとつ素晴らしい技の中でも、際立っているジャンプとスピン。彼自身が、「跳んでいるいるときが自分であり、跳んでいるときだけが自由になれるとき」 というジャンプを観てほしい。
跳べ、セルゲイ。 バレエダンサー、踊り手という "役柄" から、"芸術家" になろう、この役割を、ひとつ高い段階へ止揚させようと、取り組み始めた主人公に、幸あれ!
BBC制作は、全編を通じて、音楽の使い方が上手だなあと感じた。さすが。
今晩は
今作は、”最後の演舞 「Take Me to Church」 の迫力”に付きますね。
私も初めて見た、高い高い飛翔をする際の、足の使い方。
撮影場所も良くって・・。
広ーい劇場で、お客さんが5名程度でしたが、堪能しましたよ。速攻でパンフレットも購入したなあ・・・。では。