「危険ですから死線の内側までお下がりください。 韓国発世界行きの傑作ゾンビホラー…🧟🧟♀️」新感染 ファイナル・エクスプレス たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
危険ですから死線の内側までお下がりください。 韓国発世界行きの傑作ゾンビホラー…🧟🧟♀️
未知のウイルスにより凶暴化した“感染者“たちが引き起こす恐怖を描いたゾンビホラー映画『新感染』シリーズの第1作。
別居中の妻の下へ向かうため、ソウル発釜山行きの高速鉄道に乗り込んだ、ファンドマネージャーのソグとその娘スアン。
車内は妻が妊娠中の夫婦、高校の野球部、老姉妹、バス会社の常務など種々雑多な人々で混雑していたが、その中の1人である傷だらけの女性が突如として他の乗客に襲い掛かる。その暴動は人から人へと次々に感染してゆき…。
主人公、ソ・ソグを演じるのはテレビドラマ『コーヒープリンス1号店』や『トガニ 幼き瞳の告発』のコン・ユ。
身重の妻と共に暴動に巻き込まれた男、ユン・サンファを演じるのは『悪のクロニクル』『ベテラン』のマ・ドンソク。
野球部のメンバー、ミン・ヨングクを演じるのは『シークレット・ミッション』やテレビドラマ『運命のように君を愛してる』のチェ・ウシク。
イーライ・ロス、ギレルモ・デル・トロ、ジェームズ・ガン、エドガー・ライトといったボンクラ映画監督たちも大絶賛した、韓国発世界行きのノンストップ・ゾンビアクション。
ホラー界の巨匠スティーヴン・キングは「この映画と比べたら『ウォーキング・デッド』(2010-2022)なんて屁みたいなもん」と言ったとか言わなかったとか。『TWD』からしてみたらとんだ貰い事故である😅
本作のユニークな点はその空間設定にある。
ゾンビ×密室というのはロメロ監督の『ゾンビ』(1978)から続く伝統芸能みたいなものであり、それ自体は珍しくはない。
ただ、この映画ではそこに鉄道映画の要素をミックス。密室という空間設定により、ただでさえゾンビに襲われるか否かという事だけではなく、人間同士の諍いというサスペンス要素が追加されているのに、そこに更に鉄道が無事に目的地へと到着する事が出来るのかというサスペンスも加わる。
サスペンス×サスペンス×サスペンス!サスペンスの三乗!!サスペンスの波状攻撃!!!このアイデアを思い付き、それを実行に移した時点でそりゃもう勝ち確。見事じゃ👏
サスペンスの玉手箱のような本作だが、そこに絡み付く人間たちの足掻きもまた本作のドラマを盛り上げている。
ゾンビ軍団への先駆けを務めるのは俺たちの“マブリー“ことマ・ドンソク兄貴。1人だけ別のユニバースから来たんじゃないのかという戦闘力で、ゾンビの群れを掻き分けながら前に進む。バンテージを巻いただけの素手でゾンビを始末するマブリー兄貴、たった1人でゾンビ軍団を押し留めるマブリー兄貴、ゾンビ化を気合いで押さえ込むマブリー兄貴と、ファン必見の大立ち回りが本作最大の見どころである。もしもマブリーが主演だったら、映画のカラーらまるで違ったものになっていたはず。それはそれで観てみたい…。
にしても、本当にこの人が出てくるだけで映画がグッと面白くなる。そんな役者はめちゃくちゃ稀である。今のマブリーは正にエンタメ映画界の至宝。『エターナルズ』(2021)でマブリーを無駄遣いしたマーベルは反省しろっ!
本作で描かれるアジテーターとそれに先導される市民という構図は、スティーヴン・キング原作の映画『ミスト』(2007)を彷彿とさせる。『ミスト』の宗教ババアといえば、ホラー映画史上最悪の胸糞キャラとして有名だが、本作のバスジジイもそれに匹敵するクソ加減である。
ただ、ここで考えて欲しいのは主人公ソグとバスジジイの類似性。前半、ソグは妊婦だということを確認しながらも扉を閉め、サンファと彼の妻を危険に晒す。さらに、テジョン駅ではその他大勢の命を無視して自分と娘だけが助かろうとする。大沢たかお似の爽やか俳優コン・ユが演じているから騙されそうになるが、この主人公が中々に胸糞クズ野郎なのを忘れてはいけない。
他人の命を犠牲にしてでも生き残ろうともがいていたバスジジイ。彼がなんとしてでも釜山へ行きたかったのは、母親の安否を確認する為だった事が最後に判明する。
自己犠牲を払って娘を助けたソグと、母を助けるために手段を選ばずに生き残ろうとしたジジイ。彼らの行動は真逆に見えるが、根底にあるものは実は同じ。多分ソグも娘を助けるためなら他人を犠牲にしただろうし、それに近い事は十分に行なっている。極限状態に置かれた人間の行いに、明確な善悪は存在しない事がこの作品では描かれている。そこがただの御涙頂戴ものと本作の大きな違いなのだと思う。
プラピ主演のゾンビ映画『ワールド・ウォーZ』(2013)から着想を得たと思われる、アグレッシブすぎるゾンビ軍団の頑張りには賞賛を贈りたい。
ただ、残念なのはこの映画、グロテスク描写や暴力描写が弱い。ゾンビ軍団が列車の後部にぶら下がり、引き摺られながらもなんとか頑張るシーンは、あの体勢になったのなら身体が引き千切れないとダメでしょう。身体がバラバラになって、腸とかを撒き散らしながらそれでも喰らい付いていく。そんなゾンビ像が見たかった。
ゾンビ映画なのにレイティングがGって、そりゃ無いだろ〜。もっと血みどろのグジャグジャにならんかいっ!!
もう一つ残念なのは、電車の中に残された乗客の手荷物を活用するシーンが無かった事。使ったのはせいぜいバットとバンテージくらいのものか。
デパートで定期的に開かれる「鉄道忘れ物市」のラインナップを見ていると「何故こんなものが?」と首を捻りたくなるものが偶にある。事程左様に、電車内は様々なアイテムに満ちているのだから、それを上手く用いながら各車両をクリアーしていくという展開があっても良かったように思う。
序でに、野暮なのは分かっているのだがどうしても気になった事を言わせて欲しい。あいつら鳥目なんだから、夜になるのを待てば良くない?
いくつかケチもつけたが、基本的には大満足❣️
エンタメの満貫全席と言った具合に次から次へと面白いものが押し寄せてくるんだから、気を休めている暇がない。ジャンル映画でも一切気を抜かないプロ根性に、韓国映画界の層の厚さを見た気がした。
ちなみにこの映画、国有企業「韓国鉄道公社」の全面協力によって撮影されており、それがこのリアリティを生み出している。こういう映画に対する社会の柔和な姿勢が、面白い映画作りに繋がっているのだろう。これJRだったら絶対NG出してるよね。
※4Kマスター版にて鑑賞。オリジナルを観ていないのでどれだけ綺麗になっているのかはわかりません。
共感ありがとうございます
ゾンビ映画はあまり観ませんが、韓国映画ということで鑑賞しました。
韓国映画のポテンシャルの高さを感じる、
ストーリー展開、スピード感、迫力がgoodでした。
ラストも巧かったです。
では、また共感作で