劇場公開日 2017年9月1日

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「パワー系ゾンビ映画…ではなく、やはりヒューマンドラマ」新感染 ファイナル・エクスプレス サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5パワー系ゾンビ映画…ではなく、やはりヒューマンドラマ

2017年9月19日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

興奮

陰惨な描写に定評のある韓国映画。遂にゾンビパニックへ殴り込みだ!ストーリーは普通のゾンビもの。韓国全国で起きている暴動は、実はゾンビ化した人間の暴走だった…!ただし、主人公たちが活躍する舞台は列車内に限られる。これがいい味を出しているんですよ。

ジョージ・A・ロメロが言った。ゾンビ映画は化け物を描いたホラーではなく、極限状態に陥った人間を描くヒューマンドラマであると。本質的にディザスターなんだね、ゾンビ映画というのは。
この新感染もその「セオリー」を踏襲している。そして、何より韓国映画は、人間の闇をじっとりと描くことに長けている。さらに、日常に入り込む恐怖を臨場感たっぷりに描くのも韓国映画の特色と言える。グエムルとかレッドファミリーとかトガニとか。
したがって、列車内の閉鎖空間で起こるゾンビパニック、それに誘発されて露わになる人間のどす黒い心の闇が、丹念に描写されているのだ。車両から車両へ流れ込むゾンビのラッシュも相まって、もう、たまらない!

ただ、ゾンビ映画を観慣れた人ならば、パニックが始まって数分で誰がどういうタイミングでどういう死に方をするか、つまり誰が生き残るかわかってしまうはず。
この点に関して言えば低予算ゾンビ映画と同じではあるのだが、やはり各人の「死にざま」の対比が肝だろうか。どのような人がどういうシチュエーションで死んでいったか、誰がいなくなって誰が残ったのか、がメッセージではないだろうか。特にクライマックスの死にざまの対比は美しかった。見ているだけで悲しくなったが、これもひとつのハッピーエンドだったのだと思う。
パニックで興奮できて、クライマックスではしんみりできて、素晴らしい映画だった。ぜひ見てほしい。

サブレ