「自分で撒いた種」新感染 ファイナル・エクスプレス 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
自分で撒いた種
ゾンビ映画は20本ほどしか見てないものの(『ショーンオブザデッド』や『ゾンビランド』などのコメディよりのものも好きだけど)、ホラーとしては『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『28日後…』、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』などが好きで、去年の『アイアムアヒーロー』や『Zアイランド』など最近の日本のゾンビ映画も出来が良く楽しめるものが公開されていた上、公開前から海外の評価や評論家の方からの評判が良かったので、韓国産のゾンビ映画が一体どんなものになるのか興味が湧いて観賞。
そこまで期待爆上げで行ったわけじゃなかったけど、見終わった後宣伝通り目の端を涙が伝っていた。
序盤のじわじわと感染が広がっていく不穏さや、視界の端で異常なことが起こっていく感じがとても良かったし、密室での疑心暗鬼状態や一本道であるが故のゾンビを正面から迎え撃つアクション、ゾンビに見つからないようにゾンビ達の中を進むドキドキなど、新幹線と言う舞台が上手くゾンビ映画に合っていて、最後まで飽きずに楽しめた。
勿論極限状態での人間ドラマも面白かったんだけど、個人的にはこの作品のテーマは"自分本意になった者は必ず報いを受ける"だと感じた。
それは最初、トラック運転手が運転中に電話に気を取られ鹿を牽いてしまい、そのまま立ち去ってしまったことでゾンビ化が始まってしまったって描き方もそうだし、自分勝手な事をした人間は殺され、ゾンビと化していくのを見ていると、上記のテーマがあるんじゃないかと思う。
最終的に登場人物の殆どが死ぬのを考えると、(意識的にしろ無意識にしろ)環境問題に真剣になっている人間が殆どいないって言うメタファーにも見える。(終盤川に浮かんだ死体を見るとなおさら)
その中で主人公の娘と妊婦のみ生き残ったのは、未来に希望を託す、未来に罪を残さないって意味やメッセージがあるんじゃないのかな…。
この作品を見て気になったので、韓国の環境問題について調べてみると、ある川は汚染された結果、魚は死に、水はドロッとしていて酷い悪臭を放っている様で、何年も前から環境問題が深刻らしい。
川に限らず、自分達の周りの環境を汚すことは自分達の食べる生き物の環境を汚していることにもなるし、それがそのまま自分達の口に入ってくるのを考えると、ゾンビ化って言うのはそういう暗喩なのかも知れない。