劇場公開日 2017年1月21日

「良作!」ごはん ひぐまさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 良作!

2025年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

癒される

 安田淳一監督と沙倉ゆうのの舞台挨拶付き。キャパ約100人のホールは満席。「侍タイ」の大ヒット以来、このお二人には固定ファンが付いているようだ(笑)。
 当方もライト層のファンになったが、本作は初鑑賞。やはり大作に比すると撮影機器のグレードも違うし照明も違う。出演者のお芝居にも拙い箇所が散見され、これで筋書きがバラバラで訴求点がボケていたら目も当てられないとすら感じた。
 ところがその懸念を本作はいい方に裏切る。「ありえないだろう」な話が、実が我が国中に広まっている現状を示唆し、大げさに言えば日本の農業の危機すらも連想させる。思えば昨年来のお米不足のこの時勢に送るピッタリの話ではないか。
 ストーリー構成はわかりやすいジェットコースターものになっており、ラッキーがあれば落とし穴もある。大手映画であればラストはひかりとゲンちゃんのロマンス的な描写に移るのだろうが、そこに触れない描写がむしろいいし、観客に将来はそうなってほしいなという仮想世界も描かせた。むろん、福本清三さんの登場は作品の大きなアクセントとなっており、「刃物は得意」という渾身のギャクには笑わせていただいた。
 また、自主製作映画の強みとして、撮了後も追加撮影を頻繁に行えるという点もある。本編を見ている間は違和感なく楽しめたし、とても4年もかかって撮影された作品には見えなかった。
 実際の時間に換算すればおおよそ2~3か月くらいの物語ではあるが、濃密に描き切ったと思う。安田監督は実力のある作家であると言える。良作である。

ひぐまさん