「『どうしようもないから悲しいの・・・』」いぬやしき いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
『どうしようもないから悲しいの・・・』
GANTZで有名な奥浩哉の漫画作品を実写化した作品。フジテレビが制作に絡んでいるので一応万人向に放映コードを下げた内容となっている。だからなので、今作品、原作とはそのテイストを大きく異とする方向になってしまっている。自分はあるラジオ番組でこの漫画の存在を知り、読んだのだが大変興味深い内容で、作者の青臭い程の正義感と、闇を抱えるもう一つの人間の本質が精密な画力と相俟って、現代の神と悪魔の戦い、そうデビルマンに近い哲学的要素を充分に孕んだ内容であった。それが実写化・・・ まぁ、多分世界観は発揮しないだろうとは思っていたのだが、案の定、生温い希釈された出来映えであった。CGやSFX等は、ハリウッドのそれとは金も人材も比べようもないから仕方ない。爆発の際の、あの炎と煙を被せたような、レイヤーを貼り合わせたような効果は、どうしても目についてしまう。だからこそ、今作品の本当のキモである、哲学的本質を掘り下げた内容を、どうしてもっと果敢に攻められなかったのだろうかと非常に残念だ。原作の前半の一番のトップシークエンスであるヤクザの件がバッサリ抜けていたことがソレを如実に物語っている。ネットでの母親への追い込み方のシーンの中途半端さ等、獅子神へのこれでもかというコンボのバッドシチュエーションが浅いせいで、感情移入が入らない中で、犬屋敷との対峙の必然性が霧のように薄くなってしまっている。
その中に於いて、唯一光っていた、しおん役の二階堂ふみの演技は、流石だと唸らせるシッカリとした表現であった。まぁ、いくらフジッコであるとんねるずに主役をさせてもどうしてもコントにみえてしまうのは、あの眉毛の不自然な動かし方等々、疑問の残るキャスティングなのだが・・・
佐藤健は、今後の俳優としてのフィルモグラフィで、もっともっと酷い汚れ役をチャレンジして貰いたい。清潭な顔立ちは悪役をやるために生まれたのだから。