「同じ武器でも使いよう」いぬやしき ゼリグさんの映画レビュー(感想・評価)
同じ武器でも使いよう
いかにも日本産SFって感じが大好きです。
まず改めて思うのは、老年の男性を現役のヒーローにするという発想が凄く日本的だと思います。
いや、そりゃハリウッドでもリーアム・ニーソンとかハリソン・フォードとか、老いてなおヒーロー然としている人は居ますよ?
ただ、空を自由に飛ばせるか?と。
だらしない体を晒して、狼狽させながら。
犬屋敷は冴えないただの一般人なんです。
なぜ、それをヒーローにするという発想が生まれるのかと言えば、日本人サラリーマン特有の「哀愁」があるからじゃないでしょうか。
ヒーローとは対極にある、この「冴えなさ」とか「哀愁」もしくは「頼りなさ」というもの。
そこを衝突させる発想が、なんとも日本的に感じますし、この作品の魅力に思えます。
要するに何が言いたいかというと、ジジイがカッコよくてマジ最高という事です。
全編通してのやりきれなさがヤバい。
獅子神も、八つ当たりしたせいで自分の大切な人を亡くしてるんだから、自業自得なんです。
けどね〜その結論で片付けたくない自分もいるというか…
あれだけの惨劇を引き起こしておいて、生き残った獅子神に対して「罰を受けるべきだ」とは思わなかった自分は正しいのか、おかしいのか。
たぶんこれ「当事者にならないとわからないだろう」と言われている気がします。
自分がそうなった時、悪になるのか善になるのか。
決して、幸せな人生を送っていたら「善」に、不幸な人生を送っていたら「悪」になるというわけでは絶対に無いでしょう。
現に犬屋敷と獅子神は、どちらも本人からしてみれば幸福な人生とは言えなかったはずです。
それなのに、彼らは対極な存在となりました。
自分はどっちになろうとするのか。
出来ればヒーローでありたいものです。