羊と鋼の森のレビュー・感想・評価
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「子犬のワルツ」でこんなに泣けるなんて・・・
こつこつと歩んでいく調律師人生を描いたものだから、音楽やピアノの音色そのものが美しかったけど、全体としてはそこまで感動できる物語じゃない。それでも「森の木々の揺れる音」だとか「いい羊がいい音を作る」といった印象に残る言葉もあり、また、原民喜の詩なども素敵だった。極めつけは佐倉姉妹の姉の「ピアノで食べていこうなんて思ってない。ピアノを食べて生きていくんだよ」という言葉だった。多分、原作の小説のほうが言葉の魔術を感じるのだろうけど。
今までは調律師の仕事を甘く見ていた。キーを440Hzに合わせる調律だけだと思っていたのに、整調、整音、調律という三大要素の整調ですら24ヵ所の調整×88鍵という直しが必要というから驚きだ。フェルトにちょこっと刺すだけでも音が変わるというのだから、素人の耳ではわかんないんだろうな。そんなピアノも弾けない主人公がよくぞ調律の道を目指したもんだ。そこが山や森というポイントなんだろうけど。
最後の結婚披露宴のシーンには、途中コンサートホールでの調律を依頼された微妙な脚の位置の調整とか、人が入ったときのホールの音響の変化とか、楽しませてくれた。ただ上白石姉妹のエピソードがそれほどでもなかったのは残念。「ピアノを食べる」という台詞だけだったかもしれません。それよりも中盤のエピソードで外村が初めてまかされた新規の客がよかった。無口な客(森永悠希)の散らかった家にあるアップライトのピアノが10年以上放置され、年末大掃除のごとく丁寧に調律を仕上げ、客が弾いた曲が「子犬のワルツ」。両親、そして飼い犬まで亡くしたその客はずっと首輪を握りしめたまま。状況は説明されないものの、悲しみにくれた少年の演奏はたどたどしい指のタッチによって感情そのものが伝わってくるのだ。もう、このエピソードだけで大満足だった。
WOWOWにて視聴。 原作も読みましたが原作自体僕にとってそれほど...
ドラマとしてはまあまあ
地味
音、映像、作品の世界観、すべてが美しく、最初から最後まで夢中で引き...
静謐
映画館で観たかったのだが、見逃した。
DVDの順番もなかなか回ってこず、ようやく待望の観賞。
静かにじわじわと心に染み入る映画だった。
これ!といった理由もなく、涙が滲んだ。
予告編を観たときには天才少年の挫折と成長かと思ったが、
主人公は自然を感じられる繊細で平凡な少年だった。
スポ根のように尋常ならぬ努力をしているわけでもない。
ちょっとしたことですぐに落ち込む。
何も感動の要素はなさげだが、
三浦友和、鈴木亮平のサポートに心が温まる。
そして、一言も発しない吉行和子の存在感、
その深いまなざしに胸が熱くなった。
冒頭で書いたようにダイレクトな熱いエピソードはない。
人の心を察せられるかで、評価は分かれよう。
遅かりし由良之助!遅かりし調律師!
僕の離婚の原因
妻の弾くシューマンが耐えられなかった。
せめて「整音」でジャズの山下洋輔ばりの冷徹、かつ理知的な音に調律してもらえれば何とかなるかと思ったのだが、結論から言うと間に合わなかった。
ロマン派をあそこまで甘ったるくやられては 僕は彼女と一緒には生きられなかったのです。
だからこの映画のテーマ
「誰のための調律か?」は僕にとっては重要課題。結婚の存亡がかかっているのです。
人前で弾くなら、どうか聴き手のための調律であってほしい。
調律の良し悪しは他人事ではなかったのですよ。
・・・・・・・・
追記:
調律師の映画はほとんど存在しませんね、
l'Accordeur(「ピアノ調律師」2011年フランス)という短編はあります。盲人のふりをした調律師の起こす事件(YouTubeあり)。
調律師とピアニストのこだわりの世界についてはググれば無限です。
「ピアノマニア」という優れたドキュメント映画もあります、レビュー有り。
あと、仲道郁代だったか小山実稚恵だったか、上へ行くほど音程を上げ気味に調律したモーツァルトで物議をかもしたのは記憶に新しい。
「グランフィール」という後付けの鍵盤タッチ改良装置もありますね(アップライト⇒グランド的に)。
小説なら「調律師の恋」とか。
とにかくピアノ自体を主人公にした稀有な映画です。
音大生と登場俳優のファンくらいしか観ないんだろうけど。東宝、良く作った。
(映画の構成としてはお粗末で突っ込み所は満載。音楽をやってなかった人間が調律師になるってあり得ね~!)
そういうわけで、
わが人生の調律は失敗。ビターな思い出で観賞しましたです・・・。
森というか沼かもしれない
原作未読故に
ピアノの調律師が題材という事で、比較的落ち着いた内容の映画だったと...
極めるとは
もう一度原作を読みたくなりました。
📖本屋大賞受賞の原作に近いキャスト陣!
そしてまた新たな森へと入る
しっとり観ましょう
美しいもの、素晴らしいもの、自分の好きなものを奏でていく
こちらもコミック実写だが、今年公開されたその中では良作の一本。
ピアノの音色に魅せられ、調律師となった青年の物語。
ピアノは弾けないどころか、どの鍵盤がドの音か分からないぐらいだが、調律師が何をする人かくらいは知っている。時たま映画の登場人物の仕事が調律師であったりする。(最近だと、『家族はつらいよ』の妻夫木)
ほとんどが肩書き程度なので、こんなにも調律師をメインにした作品も珍しい。
知られざる調律師の世界は新鮮で、興味深い。そして、奥深い。
我々には異常無い音のように聴こえても、微かな音のズレも聴き逃さない。
それを調整。
丁寧に丹念に、高度なテクニックと作業が必要とされる。
それはまるで、芸術的でもある。
ピアノ奏者にとっても、言わば絶対的なパートナー。
奏者のどんなリクエストにも応える。
軽やかな音、力強い音、走るような音…素人には分からない音も見事に調整。
調律師居てこそ奏者はピアノを奏でられると言っても過言ではない。
時には、ピアノのお医者さんでもある。
調子が悪いピアノや古びたピアノを、元の美しい音を出すピアノに戻す。
ピアノ自体、メンテナンスと言うより、人間の身体のようにケアが必要。
堂々としていて、繊細。(親しい人でピアノをやる人が居るので、よくそんな話を聞く)
奏者以上に、ピアノの全てに寄り添う、ピアノの専門家。
主人公の青年・外村が調律師を目指すきっかけとなったのは、学生時代偶然、超一流の調律師の出すピアノの音に心を奪われたから。
その時の感性・イメージがユニーク。
彼が聴いたピアノの美しい音は、美しい森とシンクロ。
外村は北海道の自然の中で産まれ、育ち、それが彼にとっての美しいものなのだろう。
ピアノに携わる人たちの感性・イメージは、様々。
外村が担当を受け持つ事になった姉妹の姉。一時期スランプに陥るが、再びピアノを弾く。その際、溺れていた水中から浮かび上がろうとし、光に手を伸ばす。
皆、それぞれの気持ちや思いでピアノと向き合う。
つくづく、奥が深い。
話としてはオーソドックスな青年の成長物語。
憧れ、学び、挫折を経て、一人前として、人間として。
恩師や先輩の存在。
外村と関わりを持つ奏者たちの苦悩と、同じく成長。
知ってはいたけど改めて知る、美しいだけじゃない厳しい調律師/ピアノの世界。
ありきたりっちゃあありきたりだが、素人から見れば見易い。
コミック実写故、カットされたエピソードは目立つ。専門学校や孤独な元少年ピアニストのエピソードはもっと描かれてた筈。
山﨑賢人が主人公の青年を好演。
あまり山﨑や彼の出る映画は好かんが、本作はなかなか悪くなかった。本作と同じ橋本監督の『orange オレンジ』でも好感持ち、この監督と相性がいいのか、題材や役柄が良かったのか。
鈴木亮平、三浦友和らが好サポート。
性格もピアノの音色も対照的な姉妹を、上白石姉妹が演じているのも見所。
北海道の雄大な景色、緑豊かな森、ピアノが置かれてる部屋に差す陽光…。
劇中奏でられる数々のピアノの楽曲…。
これら映像や音楽が本当に美しく、癒され、心地よい。
心に残った台詞が幾つかあった。
外村が恩師に目指す音を問い、恩師はある詩人の言葉を引用する。
「明るく静かに澄んで懐かしい。
少しは甘えているようでありながら、厳しく深いものを湛えている。
夢のように美しいが、現実のように確か」
才能とは…?
自分の好きなものがとことん好きという気持ち。
絶対諦めない気持ち。
執念と言えるほどの。
ホールで弾くピアノと部屋で弾くピアノ。
どちらがいいなんて、比べられるものではない。
どちらも美しいものに変わりはない。
好きなもの、美しいもの、素晴らしいもの…。
こつこつ、こつこつ、それらを奏でていく。
良い話だが、ピアノを聞いていると眠くなった
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