羊と鋼の森のレビュー・感想・評価
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映像が共感覚の要素を強化した
当たり前だが、文章は音を鳴らせない。必然的に、文章で音や音楽を扱うとき、擬音や比喩を用いて読み手の脳内に音を再構築しようと試みる。どんな言葉や表現を用いるかは作家の腕の見せ所。印象的な題名の、羊は弦をたたくハンマーの素材を、鋼は弦の素材を表すが、それらが多数みっちりとピアノの本体に収まる様子を「森」とまとめた宮下奈都のセンスが秀逸だ。森は、外村が板鳥の調律したピアノの音を聴いた時にイメージする情景でもある。
一方映画は、映像に合わせて音を流せる。原作で音をイメージさせる視覚情報が指定されている場合、一義的には小説の世界を忠実に観客へ伝える意味があるが、もう一つ見逃せない効果がある。それは、聴覚情報が視覚情報を喚起するというある種の“共感覚”を、観客に疑似体験させる効果だ。
橋本光二郎監督作に関して、「orange」「小さな恋のうた」は自分に合わなかったが、本作は面白かった。
一人一人に寄り添う大切さがわかる映画
心が温まる良い映画だった
演奏場面は上質のMVを見ているよう。
無口な映画
外村の成長に合わせた映像表現
原作小説がある映画の場合、小説だとこんな感じで面白いんだろうなとか想像したりするけど、本作の場合は逆に、音も映像もない小説という媒体でこのシンプルなストーリーをどうやって面白くしているのか不思議でならない。それはつまり映画「羊と鋼の森」が映像と音楽を最大限に活かした良作だったからそう思うのだろう。
冒頭から果敢な映像表現で、ピアノ調律師を主人公にした音楽の映画を表現していく。音楽よりも映像を前に出していくんだなと初めは思った。
それが中盤くらいになると映像表現は控えめで、音楽の方が前に出てくる。
観賞後に気付いたのだが、映像は外村の音楽に対するイメージで、音楽はそのまま音楽。外村が音楽に対して未熟だったときは音楽そのものよりもイメージの方が先行する。彼が成長して調律を理解していくと本来の音楽が映像を飛び越えていく。そして終盤ではもちろん、音楽と映像が調和した心地よい感動を届けてくれる。それはそのまま主人公外村の成長の証。
光、森、水、などの映像はすでに書いた通り美しく素晴らしいが、キャラクターの心情変化を表現するのに演者たちがみんなイイ表情をしていたのがすごく印象的。本当にちょっとしたシーンだけど好感と気持ちよさを届けてくれる好演だった。
ストーリーは刺激が少なくて、すごく泣けたりすごく感動したりすることもなく、文字にするとこんなにつまらなそうだけど、ピアノと調律を映像を使って美しく表現した映画の真骨頂のような良作。
やっぱり、小説はどうなっているんだ?
崇高
ピアノの傍らにたたずむ美しい魂
ピアノ調律師・・・ピアニストにとっては、かけがえのない相棒。
でも調律師は究極の裏方のひとりです。
そんな慎ましくも密やかな調律師・外村直樹を山崎賢人が好演して
います。
ピアノ好き音楽好きには堪らない映画でした。
外村の最初の顧客、音大を目指す美しい姉妹、
佐倉和音と佐倉由仁を実際の姉妹・上白石萌音と上白石萌歌の2人が
情感いっぱいに演じて感動的です。
ピアノは「羊」の糸で作られたハンマーを、「鋼」の弦をたたくことで
音が鳴ります。
そこから原作者の宮下奈都が「羊と鋼の森」と題名をつけました。
映画も題名通り、詩情に溢れ爽やかさと静けさに包まれます。
外村直樹の調律師としての成長物語であると共に、佐倉姉妹のピアニストになる
鍛錬の難しさ・その苦悩と挫折も細やかに描かれています。
萌音さんと萌歌さんの演奏場面は動きの躍動感がまるで彼女たちが実際に
弾いているような素晴らしさで、2人の非凡な才能を垣間見ることが出来ます。
ピアノ挿入曲は多数で美しい演奏を堪能しました。
ラヴェルの「水の戯れ」
ショパン・エチュード9番「蝶々」
ベートーベンのピアノソナタ「熱情」
姉妹の連弾演奏でモーツァルトの「キラキラ星変奏曲」
そして調律先の廃屋の青年が弾くショパンの「子犬のワルツ」
(・・・この青年の演奏は切なかった)
忘れてならないのは外村直樹が生まれ育った北海道の山村の森。
森が繊細な響きを聴き分ける彼の音感を育てたのでしょう。
そして勤務地・北海道旭川市周辺の自然の豊かさと美しさ。
雪景色に先輩調律師・鈴木亮平の運転する赤いジープや山崎賢人の乗る
ミリタリーカラーの軽自動車が映えました。
計算も打算もない、清潔感溢れる本作品。
気持ちが洗われるようでした。
調律師とピアニストの心境がよくわかる。深い!
映像、音楽、美しい
音と自然が一体となる
雪と山と森と・・・風景がとても美しくその中で奏でられる音が澄んでいて美しい。
調律という仕事に真摯に向き合っている青年の成長が、淡々と確実に描かれていて、落ち着いて重厚感があり、心に染みる物語だった。
何も知らないで観たから、ここは富山あたりかな~と思っていたらロケ地が北海道で、あの雪のキラキラ具合は寒さの厳しい地区だからの景色だし、空気の澄みぐあいが映像から伝わってきた。
ピアノに無縁な私だけど、音色と自然の融合には感動した。
しっかりした原作あっての映画で、原作の世界感を壊さず作り上げたのかな。
最近の若者の成長物語にはない、地に足がついたような映画だった。
やっぱり映画館で観れば良かったと思うけど、DVDだからもう一度観ようっと。
山崎君の抑えた演技も良かったわ。
プロですね
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