「よい出来でした」羊と鋼の森 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
よい出来でした
「森の映像」と「音」を視聴覚的につないで印象づけた映画作りの勝利だと思う。
原作を読んでいる際に、読者が頭の中で想像している心象風景を外に出した感じ。
森の明るさや色合いなどは読者それぞれだろうが、自分には割とあっていた。
原作のベースを貫く「落ち着き」。そしてそれを背景に、ちょうどピアノのハンマーが弦を叩くように起きるひとつひとつのエピソード、という対比も上手くいっていた。
さらに、そのエピソードを通して、調律師あるいはピアニストという職業への決意が、静かにかつしっかりと伝わってくる。「私は、ほんとうにこの職業が好きだ」という自覚。それは、腕を上げていく各段階で湧き上がるものだという点もまた、しっかり伝わってきた。
初めて挫折を経験した主人公に板鳥がかけた言葉「きっとここから始まるんですよ」は、観ているこちらの心に染み渡る。いいシーンだった。
一方で、それがほんとうに始まりに過ぎなかったことを示すエンディング。調律師のように "道" を進んでいく者たちは、いつでも次ステップのスタートラインに立っているんだなあ、と気づかされた。いや、俺たちもみな、実は同じなのかもしれない。みんな、いつでも、次のステップを歩き始めているのかもな。
山崎賢人はじめ鈴木亮平、三浦友和と、みな映画の基調になっている落ち着きを上手く演技していた。そして上白石萌音の美人でない点が、また絶妙にはまっていた。いい配役だったと思う。
不思議な爽快感と共に映画館を後にすることができた。
追伸
鈴木亮平のドラマーシーンは長くないけれどカッコいい。ファンの方は必見!
うわ、やっぱ、弾ける人の目(耳かな?)って、すごいですね。
経験していることが多いと、さまざまな映画を(経験していない人よりも)一段階深く観ることができて羨ましいな、と思います。ただ、俺は面倒くさがりで、あまりいろいろなことをやって来なかったので、今さらですが残念です(笑)
音を言葉にする文章力はCBさんの足元にも及びません(本心から
そう思います)
上白石姉妹の演奏するフォーム、姿勢、動き、躍動感、
超一流ピアニストそのものでした。
調律師さんとも知り合いでしたが、コンサートピアノを調律する方は、
エリート中のエリートだと思います。
「ラ・ラ・ランド」でライアン・ゴズリングがあの高度なジャズピアノを
実際に弾いたと聴きましたが、とても信じられないんですよ。
永野芽郁ちゃんが「そして、バトンは渡された」で弾いていたのは、
間違いないと思います。
コメントありがとうございます。
この映画はピアノの音色が音として伝わり感動します。山崎賢人の静かな演技がいいですね。
無駄な台詞が無いので演技で伝わるものがあります。