「森の音が響いてこない」羊と鋼の森 由良さんの映画レビュー(感想・評価)
森の音が響いてこない
『陸王』で山崎賢人氏の演技に惹かれて見た映画。
『陸王』ではいい演技をしていた彼だったが、終始おどおどした自信のなさが目立った。
その一番の要因は主人公自体の調律をしていくなかで培ってきた、核心的な部分がはっきり見えなかったからだろう。
序盤の学校での調律でのシーンでピアノの音が森の音と重なる表現も、全く何が言いたいのか見てとれない。
ピアノの調律が森のどういったことと重なるのか、さっぱり分からない。
主人公が生きてきたなかで森がどういう役割を果たしてきて、調律をしていくなかでどのように森を捉えるようになってきたのか、その辺の描写が足りない。
ピアノの音と森の音が重なって聞こえるなら、もっと自然の音も響かせないと見ている側にはその関係性は見えてこない。
だから、ライブハウスのシーンで柳先輩の過去の話を聞いた後に「柳から柳さんに変わったときだったんですね」と言う主人公の台詞も意味がよく分からなかった。
祖母が死んで弟から「兄ちゃんが調律しになるって言ったときも、ばあちゃんは兄ちゃんは森で迷っても必ず帰ってきてたから大丈夫だって言っていた」と告げられたのも、一つのターニングポイントになるはずなのに、主人公と森の関わりが見えてこないだけに、台詞が入ってこない。
最後の佐倉姉妹の「ピアノで食っていくんじゃなく、ピアノを食っていくんだ」って台詞も浮いている。
結局、原作ありきで作っている映画にしかなってないから、原作の台詞をただ引用して浮いてしまうのではと感じた。
最近こういう邦画が多くて、悲しくなる。
どうせならオリジナル作ればいいのに。
余談ですが、原作読んだ母と一緒に観に行きましたが、序盤から寝ておりました💧
なので寝れるに一票。
私は原作未読だったので、母から原作に描かれていた森の描写のことなど細かいことを聞いて、ようやく内容を理解できました。
映画だけではあの内容を理解するのはちょっと難しい。