「抒情的な映像」羊と鋼の森 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
抒情的な映像
2016年の第13回本屋大賞を受賞した宮下奈都の同名小説『羊と鋼の森』の映画化作品。
原作も読んでいるんですが、映像にすると、こんなに抒情的になるんですね。って言うか、抒情的になったのは、脚本、監督の演出のためかもしれませんが。ピアノの音を聞いた直樹が森の中を彷徨って歩いたり、和音も水の中で浮かんでいたりと、ものすごく、抒情的な映像に感じました。
その悩み多き青年、直樹を山崎賢人が中々上手く演じています。うっかりすると、感受性が高く自然と話が出来る、危ない青年にも見えかねないですが(笑)本を読んだ印象では、直樹がここまでナイーブで、悩み多き青年だとは思いませんでした。
上白石萌音と上白石萌歌の実姉妹が、劇中でも姉妹役で出ています。原作では、姉妹は双子と言う設定でしたが、映画では特にその設定には触れられていません。見る人にお任せと言う事なんだと思いますが、実際には双子では無いですし、見た目も双子には見えないので、映画では普通の姉妹と言う事なんでしょうね。ピアノを演奏する引きのシーンがあります。引きの映像では、手元の吹き替えが効かないわけですが、それっぽく演奏していました。二人の実母がピアノの先生であるものの、萌音は小1までしかピアノ経験がなく、萌歌に至ってはピアノ経験がなかったらしいのですが、猛特訓して撮影に挑んだと言う事だそうです。
あと、作品中では、一つのエピソードでしかないのですが、直樹が初めて調律に行ったシーンも印象的ですね。位牌が二つ置いてあり、犬の首輪を青年が持っているのですが、それらには、いろんな幸せな思い出があると言う、中々印象的なシーン。特に、直樹が青年に尋ねることも無いのが、良かったと思います。あそこでね、青年に話を聞いて、気を遣うようなそぶりを見せたらダメですよね。
先に書いたように、思ったよりも抒情的な演出になっています。そういう演出が苦手な人にはお勧めしませんが、人の成長描いた映画としては、まぁまぁ、面白いと思います。