「コスチュームを介した現実と虚構の逆転劇。」ノクターナル・アニマルズ MPさんの映画レビュー(感想・評価)
コスチュームを介した現実と虚構の逆転劇。
自分を見限った元妻に渾身の自作小説を送りつけ、架空の物語を通して封印してきた現実の思いをぶつける男。それを読み進むうち、次第に架空の世界に魅了されていくヒロイン。稀に見る間接的復讐劇の登場である。そこに、世間の古い価値観と格闘してきた監督、トム・フォードの怨念が凝縮されていそうだが、主人公のキュレーターが身を置く現実世界が虚飾に塗れていて、小説の方がよりリアルという空間の逆転を、俳優たちが着用するコスチュームによって表現したところも、デザイナーでもあるフォードらしい。中でも、小説に登場するマイケル・シャノン扮する警部補が着る、いかにもテキサンらしいワイルドなカウボーイ・スタイルには、フォードにとって今は遠くなった故郷、テキサスへの熱い思いが感じられて、ちょっと切なくなる。
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