マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
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押しつけがましくない距離
最初から、主人公の瞳に惹き付けられました。
整った、綺麗な顔つきなのに、諦念の滲んだ力のない瞳。どことなく哀しそうで、目が離せない。
扉を蹴破るシーンや、甥っ子が写真を見つめるシーン(写真が映らないのがニクい)、最後にちょっと映った小さな笑顔等が印象的でした。
乗り越えられない、という答えもすんなり受け入れられました。
哀しみを、哀しみのまま持ち続けることが許される優しさを感じました。
自分ならと考えてみる……
兄の死をきっかけに自分の忘れられない過去と対峙しなくてはいけなくなった、とても悲しい話です。
兄が自分自身の寿命が短いと分かってるうえでの遺言。その中に、甥っ子の後見人となり、過去から逃れるために出ていった街、マンチェスターバイザシーに戻って、いっしょに暮らしていけるのか、できないと思うが、甥っ子は、街から今の生活から変えたくない、引っ越したくない。当然だと思うが、その中での二人のいろいろな葛藤と街の美しさ、過ぎ行く時のなかでの最終選択するのは?
あっという間の2時間です。いろんな方にみていただきたいですが、やはり男性の方に観ていただき、感想を聞いてみたくなる映画です。
米国的父性
マット・デイモンプロデュースで、ベン・アフリック弟のケイシーが主演男優賞とった作品。
もとはデイモンが監督・主演のつもりだったらしいが、Martian と予定が重なってロナガンに丸投げ、主演はケイシーに、となったらしい。
この交代劇は間違いなく吉であっただろう。
もともと気性が荒く口下手、対人関係をうまくこなせない子供っぽい性格、さらに自分の過失で言葉にできないほどの悲劇を招いてしまったリーには、おおらかで温かく弟も家族も深く愛する兄がいる。
その兄が心臓の病でぽっくり死んじゃう。
んだが、自分の病を知っていた兄は、息子をリーに託すと綿密な遺言を残していた....
リーの兄の他にも、米国的な善良で我慢強い父性キャラが多く登場する。
兄が亡くなったときの担当医師、パトリックの部活顧問教師、兄の遺言を預かった弁護士、リーの悲劇のときに面談をした警察官。
兄弟の友人であるジョージなど、しまいにパトリックを養子にするんだから、もうなんと言ったらいいか......
リーは素晴らしいロールモデルに囲まれながらも、そうはなれない自分にコンプレックスを抱き、なんとか壁を越えようとはするんだよねぇ ...
でも、I can't beat it なのだ ToT
I can't beat it なのだけれども、パトリックのための場所は作る、それが小さな灯火となって心に残る、というお話。
さらにどっしり賛美歌的な歌やクラシックがBGMで、なんだか古い映画を見ているような気もしないでもなかった...
そうそう、父性の濃い男性陣に対して、女性はアウトなのが並ぶ。
パトリックに言い寄る同級生女子たちや、彼女のお母さん、は序の口かな。
リーの元妻、リーの兄の元妻=パトリックの母
どっちも子供。
自分のことしか考えられないタイプ。
日本の女とは、だいぶ違う。
あ、病院ワーカーさんたちはしっかりしてました。
どうしてくれんだこの気持ち…
どうしても乗り越えられないことを今どうやって乗り越えるかの不正解のような映画だった。
不正解というか無回答というか…
ミシェルウィリアムズの演技が…
堪らんかった…
心が壊れ続けてる
重い重すぎる一言だった
再生の始まり
とてもリアルで誠実な物語だな、という印象です。
途中に明らかになったリーの重すぎる過失。自分のミスで2人の実子を殺したのだ。しかも若干ラリっていた状態で。
「そんな超ヘヴィな十字架を、しかも事故が起きた街で背負っていくのか!乗り越えられるの?無理では?」と思って観ていたら、リーの乗り越えは描かれず。むしろ安易な着地に持って行かないケネス・ロナーガン監督の誠実な姿勢に少しホッとしました。
とはいえ、リーの変化はバッチリ描かれていて、観応え充分。
特に印象に残るのは、本作のハイライトであろう「乗り越えられないんだ」という、リーの独白シーン。
それまでリーの時間は動かなかった。火事の後の警察署での自殺は未遂に終わったが、リーの心はあの時死んでいた。
しかし、リーはその言葉を語れたことで、乗り越えられないことを認めることができた。生ける屍だったリーが、少しだけ蘇った。今までは辛すぎる傷と向かい合えなかったが、この一言を語れたことで、ついに向かい合えて、一歩踏み出せた。
そして、それまで紡がれてきたリーや周囲の人たちの心理描写がとても丁寧だったからこそ、その一言が重くリアルに迫ってきて、心に沁み入る。
その後の船の上で見せる笑顔や、新しい住居にパトリックを呼べる部屋を設置したい、というラストのリーの発言は、前半とはまるで別人。こう考えると、この映画はリーの再生の始まりを描いた物語だった。
リーの心に光が射したこととマンチェスター・バイ・ザ・シーに春がやってきたタイミングを重ね合わせるラストはとても見事で、時がわずかに動き出したんだなぁとしみじみ思い、深く静かに感動しました。
ランディとリーとの邂逅も良かった。ランディも心に蓋してごまかして生きていた。なので、リーとの再会し、思わず気持ちをブチまけてしまったことは、彼女も自分と向かい合うきっかけになったようにも思えました。あの出会いがあってこそ、両者が乗り越えられていないことを意識化出来たのでは?それも含めてリーは街に戻ってきて本当に意味あったな、と感じました。
欠点としては、尺が長いこと。もう少し尺を短くまとめた方がよりグッと迫ってくるようにも思えます。深いけれどもシンプルな話なので、長くする必要はないような。散漫に思えて印象にも残りづらく、本当に惜しいなぁとしみじみ思います。
また、意外なほどにギャグのキレがあり、サンディ絡みの演出は悪意に満ちていて最高でしたね。バンドの痛さがハンパない。サンディ母のアホみたいな感じとかヒドすぎて爆笑。あの親子はきっとその場のノリで作られたキャラだろう。ストーリーとまったく関係ないし。監督は悪ふざけしているとしか思えず、ホント最高!
(尺を短くするならば、真っ先に切られるのはこの辺なんだけど)
ギャグとは言えないけど、パトリックの母親夫妻の気色悪さもいい感じで毒があってシリアスながらも少し笑ってしまった。
2017-31
アメリカの話なのね。
左ハンドルでアメリカ英語なので、🤔と思っていましたが、このマンチェスターはイギリスではなくアメリカのほうでした。
こちらは行ったことがないのですが、海に囲まれたちょっとグレーな感じ、日本海側の街に似た雰囲気がありますね。
主人公の心を閉ざしている感じもあわせて、なんとなく『追憶』と重なりました。
ケイシーの静かな演技がいい。
役に溶け込んでいました。
お兄ちゃんの作品はよく見てて、ケイシーのは片手くらいしか見たことなかったけど、これからチェックしたいと思います。
パトリックが、冷凍庫から冷凍した魚とかがボロボロ落ちてくるのをうまく入れられなくて、「お父さんを凍らせないで」と、心が壊れていくシーンが心に響きました。
●厚い氷が溶けるには時間がかかる。
想像を絶するとはその通りで、かける言葉もみつからない。心を固く閉ざした男。故郷を離れひっそり生きる。冬曇りの日本海みたいな灰色の景色に囲まれて。
伏線も仕掛けもない。その分、余計なことを考えずに作品に集中できる。過酷すぎて感情移入も難しいが、親友だったらどうするか考える。本人がいちばん辛いだろうけど、周囲もまた辛い。何ができるわけでなく、できないからまた辛くなる。
あれはやっぱり、そういうことを飲みこんだ兄のやさしさなのだと思う。そう思うとまた泣けてくる。唯一みせる船の上の笑顔がまたなんともいえない。
固くなった心が静かにゆっくりと溶けていく。あれは春の日差しだろう。
起伏だけが表現ではない
時間としては長い映画でありながら、セリフの量はそう多くはない。そんな作品でのケイシー・アフレックの演技は素晴らしいとしか…ただの演技なのではなく、間の取り方、表情などが圧巻。
悲劇的な過去と向き合うリー。2つの時間軸が交差的に絡むことでケイシーの演技のコントラストがはっきりとしていて面白かった。
彼に残る罪意識が残された人生に大きく影響しているわけで、それは普遍的であることを静かなテンポで描いたのは見事と言うほかない。
ケイシー・アフレック
しかし、女の人はみんな新しい生活を始める。
これが一般的な女性観なのかな。
新しい生活に踏み出して許しを乞う女。これはちょっとよく分からないけれど。
時の経過が女の人をそういう気持ちにさせるのか。
普段からリーが、危なっかしいことをして、家族を危険に晒しそうな人だったとしたら。それを何度も言っているのに改めてくれなかった結果のあの事故だったとしたら。
とても許せる気にはならないだろうな。
あの時死なせてやれとも思うけれど、甥っ子がいて良かった。
兄ジョーは、パトリックと生活することでリーが生きていけると思ったから、後見人にと託した。
リーにとってパトリックが最後の砦だ。
パトリックはリーにとって生きる意味になる。
絶望とか孤独とかと折り合いがつかなくても生きていかなければならなくなるから。
「お前が遊びに来るかもしれない」だから生きていける。
家族や血縁のありがたさ、家族を持つ意味を感じる。何をしてくれなくても、迷惑をかけられていたとしても、生きる縁となりうる。自分自身の問題として。
考えたら苦しい。難しい。
乗り越えられなくてもいい。
喪失感は簡単には埋めることはできない。
一人で考え込まない。誰かをもっと頼る。
忘れることもできないから、物事を受け止められれば十分だと思います。
景色と音楽が素敵です。
甥とのキャッチボールに、優しさを感じます。
賞レース席巻も納得の出来。
昼間に鑑賞。終始静かに進む物語と美しい景色の映像の中にケイシー・アフレックの演技が光る。考え得る中でも特に残酷で過失という罪を背負いながら生きる男。
とにかく幸せになってほしいと思いながら観ていました。しかし乗り越えられない事もある、周りがどんなに許しても、どんなに優しい言葉をかけても、頭ではわかっているが心が納得出来ない…。そんな男をケイシー・アフレックが見事に演じていました。元妻との会話のシーンはグッとくるものがありました。あんなに重く感じた映画は久しぶりでした。観た人と暫く感想で語り合える映画だと思いました。
ドラマという映画のジャンルが好きな人は好きになれる1本でした。
2隻の舟は、近づきすぎるとうまく進めない。
それぞれに、心に傷を負った者同士(あぁ文字にしてしまうとなんて陳腐な表現)、長い人生の間のわずかの期間、すれ違うようにして並走し合う日々を描き、物語にも演出にも演技にも、過剰な説明や華美な装飾を加えずに、内なる情感だけを丁寧に丁寧に救い上げるようなそんな映画。主演のケイシー・アフレックもミシェル・ウィリアムズも若手ルーカス・ヘッジスも、派手な演技方法は一切用いておらず、寧ろ感情を押し殺すような演技を貫く。それでいて、情感を内に溜めて溜めてついに溜まり切らなくなって溢れ出たその一瞬のひとしずくを、3人とも見事に体現していて実にドラマティックだったし、本当に胸に響いた。坦々とした物語と静かな情感の積み重ねが、大きなうねりを生み出してドラマを揺るがしていく物語に、気づけば打ちのめされるほど感動していた。
まったく似ていないようで、とてもよく似たところのある、しかしやっぱりまったく似ていない叔父と甥が、お互いを慰めるでも癒すでもなく、けれどもお互いがしっかりとお互いを視界の端っこで見つめ合っているようなそんな関係。
べったりと寄り添うような真似はせず、飄々とした態度を取りながらも、既にしっかりと傷跡を残してしまったそれぞれの過去の痛みや悲しみを引きずって、まるで心が追い付かないまま日々を送っているかのような二人。表面的な「再生」が慰めになるほど、それぞれの傷は浅くないのが伝わる。
だからこそエンディングは、二人が距離を置いて離れることで幕を引く。別れが寂しいとも言わない二人は、やっぱり飄々と拾ったボールを投げ合って、お互いの存在を確認し合う。
「そばにいること」の大切さは頻繁に語られるが、しかしこの二人は「そばにいないこと」をあえて選択する。誰かがそばにいるから傷が癒えるだなんて幻想でしかない。2隻の舟はあまりに近くを走りすぎると波を喰らって転覆してしまうもの。そんなことを見透かすかのようにして二人は離れる決断をし、まるで「ちょっと家族ごっこをしてみただけさ」と吐き捨てるかのように少しも感傷に浸らない。もしかしたら、このまま二人は二度と顔を見ることもないかもしれない。離れていくことを、悲しいでも寂しいでもなく、これもまた二人の船出なのだと言い切るところに、この映画の誠実さを見た気がした。
愛の遺言
Manchester-by-the-Seaが地元で、不運の家系と言ってもいいくらいのChandler家。
長男Joeは心疾患でいつ突然死してもおかしくない状態。その妻Eliseはアル中のため離婚。Joeが亡くなった後、息子Patrickは一人残されます。
次男Leeは、自らの不始末で全てを失い、妻Randiとは離婚。
小さな港町で、同情もある一方、やや白い目で見られている雰囲気が漂っていました。
Leeの回顧シーンが、現在と交差するように、ぽつんぽつんと挟まれます。あの事故以来、Leeは陽気な性格から一転、やさぐれて心を閉ざしていますが、彼の人生はほとんど前に進んでいないことが分かります。
元妻達はというと、Eliseはアル中を克服し信心深い男と再婚。Randiも新しい夫と子育て中。女性は一見ちゃっかりしているのかとも見えます。
そして特に対照的なのはPatrickで、父親の死後も社交的なまま、以前と変わらないかのように生活しています。
Lee以外の人間はみな喪失感をたやすく乗り越えて、どんどん前へ進んでいるのかというと決してそうではなく、EliseはPatrickを食事に招いても動揺を隠せず、Randiは心が壊れたままだと告白し、Patrickも冷凍庫の前で突然号泣します(←女の子に熱中してばかりなのでちょっと安心しました(^^;))。誰しも過去の過ちや不幸を抱えたまま生きているのです。
死期が近いことを悟り丹念に準備していたJoeは、Leeに再出発の機会を贈ったのでしょう。ただLeeが背負う十字架の重さは格別。
"I can't beat it."
とても乗り越えられるものではないのだと。
Randiと話すことで、未だ粉々に壊れている自分の心を再認識したLee。あの大惨事を忘れることも、自分を許せる日も来ないのかも知れません。しかしJoe兄さんの愛情は遺産としてLeeとPatrickのこれからを静かに支えてくれると願いたいです。
淡々とした描写でやや尺が長い気もしました。退屈と感じる方もいるでしょう。でも立ち見もいる劇場は久しぶりでした。
重苦しい話を、美しい景色と音楽が、時に冷たく、時に優しく包み込んでいました。
てっきりイギリスのマンチェスターが舞台だと思ってずっと見ていたた...
てっきりイギリスのマンチェスターが舞台だと思ってずっと見ていたため、ボストンという地名が出てきてそれからずっとアメリカなのかイギリスなのかそこばかりが気になってしまった。
あれだけの事があれば、主人公が意固地になってしまうのは全くしかたのないことで、そんな主人公を責めた義姉は最低すぎるし、あれだけ嫌われても全く仕方がない。
甥の高校生が、とんだヤリチン野郎で全く可愛げがなかった。おじさんを足に使っているのにあんまり感謝もない。ボートを大事にしているところはよかった。
登場人物の気持ちをとても丁寧に描いていたすごい映画であるとは思うのだがとにかく暗いし、甥は可愛げがないし、あまり好きにはなれない映画であった。
新宿武蔵野館にて観賞
主人公が招いた悲劇には胸が潰れる思いになるが、やたら機関銃のように被せて話すズレた会話に笑ってしまう。これは上質な悲喜劇だ。
主人公の決断や感情にリアリティがある。特に主人公が明確に乗り越えなれない事があるという点は通常の映画と違う。
脚本はそのように驚嘆するが、人物の空間を面白い形で見せる演出も効果的だ。ケネス・ロナーガンは前々作よりも相当進化しており、今後も注目したい。
ボストンから車で1時間のマンチェスター
マンチェスター バイ ザ シーがアメリカの地名とはつゆ知らず、最初は戸惑った。しかも海の色がイギリスっぽかった(笑)。
ベン・アフェレックの少ないセリフから伝わる苦悩が良く伝わった。パトリックのパニック発作のシーンで泣けた。しっかりしているようで、まだ子供なので少し安心もしたが。
それにしてもリーは防火意識に欠けるぞ!
乗り越えられない
とても人間らしい作品で胸がいっぱいになりました。
最後に甥っ子と距離が縮まったにも関わらず、なぜ街には残ってくれないのか、という問いかけに対して、乗り越えられない、と答えた部分がとてもリアルだと思いました。
映画ってハッピーエンドに作りたがるけど、きっと本来人の人生って、乗り越えられないものを抱えていて至極自然なのかと
Manchesterd By The Sea
主演男優賞をとったケイシー・アフレックが、重い十字架を背負った男の孤独をとても自然に演じていた。
演技ではなく、彼自身、何かを背負って生きているのだろうね
映画は、淡々とと兄の死と共に生まれ故郷に戻り、兄からの遺言で兄の一人息子(高校生だが・・・まだ、また子供)の遺産後見人にされた弟の話です。
全体的に、重い暗い空気が、ずっーと漂っている映画でしたが、彼の甥っ子が、わざと友達と遊んで父親の死と向き合いたくない気持ちや彼を心配し兄との暖かい想い出と辛い辛い自分砂自身の過去と向き合わなくてはいけなくなった彼の気持ちが、痛いほど伝わってきた重い映画だった。
終わりかたが、なんだか呆気なかったけど・・・でも、やっぱり観て良かった映画です
海沿いの小さな町
だから、事故の事も離婚も兄の事も、隠しようも隠れようもない。
元妻にばったり出くわすような町。
リーは自分が幸せになってはいけないと信じ込んでいる。元妻は自分のひどい言葉でリーを傷つけた事を謝りたいと思っているが、リーは彼女から許されたいとは思っていない。
話さない男の傷は癒えにくい。自分と他人を傷つけることは、一番癒しから遠い事ではないかな?
音楽がしっくりこないところがあったが、演技、風景、海と町の空気、何気ない会話がとても良かった。
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