劇場公開日 2017年5月13日

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「うだつの上がらない雰囲気と目、そして間が最高に良かった!」マンチェスター・バイ・ザ・シー ayayanさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0うだつの上がらない雰囲気と目、そして間が最高に良かった!

2017年5月14日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

主人公リーが過去の罪を背負い、自分を責め続け心を閉ざしたまま生きて行こうとする悲しいストーリーだが、全体に醸し出される優しい雰囲気が、重さを感じさせない。

私が最も印象に残ったのは自分がおかしたミスを警察で告白したあとのあのシーン。
楽になれた方がどんなに良かったか。しかしそれは許されず、その後は自身の傷を癒したり幸せを求めることは許されないと思って生きて行く。
この悲しみを背負うシーンで流れる音楽は、泣くところを教えてくれる感じだったのに、つい引っかかってしまった。

自分を傷つけるように短絡的にトラブルを起こしていたリー。理由が解るまでは、単に短気で暴力的な人なのかと思った。目があっただけでも周りから避難されていると常に感じていて、ああすることで、抱えきれない自分を守っていたのだろう。

また、最も傷ついたであろう元妻ランディは、ずっとリーを責め自分を責めていたが、相手も自分も「許す」ことで前へ進もうとしていて、その強さは対象的。ランチしよう少しでも楽になろうと誘った元妻の言葉を、リーは心に入れようともせずに逃げるように去っていったのだから。
ずっと同じ場所に立ち止まっていたいリーにとっては、新たな希望を見出す元妻を許せない感情が渦巻いただろう。

パトリックの親代わりを引き受けようと葛藤しながらも、どうしても未来へ踏み出せないままリーとパトリックが思い出の船で釣りをする。このシーンでは、二人の背中に孤独が映され、まだまだ時間が必要なのだと伝わってきた。

マンチェスターの海や家並みは本当に美しく、優しく、暖かく、変わらずずっとある故郷に、哀愁と少しだが希望がみえたように思う。

saiko *