「アニメ作品としてはよくできていると感じましたが、話として面白いか、...」打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? むとうななさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメ作品としてはよくできていると感じましたが、話として面白いか、...
アニメ作品としてはよくできていると感じましたが、話として面白いか、よくできているかというと疑問です。
意味深な描写や謎を残すことで作品を意味深いものだったかのように見せるのは結構簡単なことで、それはある意味では説明を放棄しているということでもあると思います。
謎めいた作品でも、その謎を考察することが楽しかったり、考えるうちにある程度自分なりの答えが見つかるものには価値を感じますが、この作品は突き詰めても謎が謎のまま宙ぶらりんになってしまう中途半端な出来であるように感じました。
原作を見れば理解できる部分もあるかなと思い、映画を見たあとにテレビ版を視聴したのですが、後半の展開にかなりの違いがあるのですね。
主人公の年齢の変更やSF要素を盛り込んだことで、そもそもアニメ版は原作ともテーマの全く異なった作品になってしまっているように感じました。
特になずなについての数々の設定や展開の変更は何を意図したものだったのか疑問に感じます。
原作のなずなは、『かけおち』を企てるものの、結局自分からそれを諦めてしまう程度に主人公より大人で、現実を知ってしまっている存在です。また最後まで自分の事情を一切明かすことなく、謎めいて大人びた憧れの女性のまま主人公の前を去っていきます。
このなずなのミステリアスさ、あの年代の少年と少女の成長のスピードの差異が生み出す微笑ましい齟齬みたいなものがあの作品の魅力ではないかと思うのですが、アニメの二人からはそういったものが感じられなかったように思います。
あのままの脚本、あのスタンドバイミーみたいな雰囲気の世界観のままアニメ化したらどうなっていたか見てみたかったような気がしました。
ところでテレビ版のなずなは、まだ10代前半の奥菜恵さんが演じているんですよね。このなずながほんとうにはっとするような美少女で、けして演技がうまいわけではないけれど『クラスのマドンナ』として存在だけで圧倒的な説得力がある。
アニメ版では、なずなが「私はアイドルになれる」といったようなことを言う辺りではじめてああこの子はひと並外れてかわいい子なんだな、と気づけたので、そのあたりがアニメの難しいところかもなと思いました。アニメではみんな同じく美少女に描かれるので、台詞で『クラス一かわいい』とか『誰よりも大人びてる』とか説明されないと伝わらないんですよね。
というか、それが伝わるアニメもあると思うのですが、渡辺明夫さんの絵柄だと微妙な年齢感やモブとメインキャラの存在感の違いなんかが表現されづらかったんじゃないかと思います。一般受けどうこうだけじゃなく、この話はそのあたりの表現がすごく大事だったと思うのでもっと写実的で子供だけど子供じゃない年代の子をちゃんと描ける絵柄でキャラデザしてほしかったなーと。