「じわってきた」打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 招かれざる客さんの映画レビュー(感想・評価)
じわってきた
見ている時は退屈だった。
ありきたり過ぎるストーリーと好感の持てないキャラクター。それがループするというのだから、見ながらげんなりしたのは覚えている。
が、後になってよくよく考えると、果たしてそこまでつまらなかったのだろうか。全体的につまらなかったのは確かだが、思い返すと、電車の中でのシーンだけは見ていて楽しめていた気がする。「家出」、しかも同じクラスの女子と。この展開は普通に楽しい。こういう純粋に楽しめる場面がもっと多ければ良かったのだが、序盤はそういうところがほとんどない。ただただ、退屈である。
ちなみに、そもそもこの映画を見た目的がなずな役の「広瀬すず」なのだから、なずなが目立っている電車のシーンは好感触で当然である。なずなが歌いながら自分のアイドル姿を妄想するシーンは、かなり笑ってしまった。というのも、公開前に発売されたサントラにすずちゃんの歌が収録されると話題になった時、彼女自身が「歌は苦手だから、自分の歌が流れているシーンを見ていると恥ずかしくなる」というようなことを話していた。
確かに、キツい。自分の歌声が流れながら、あの映像はかなりキツい。恥ずかしくもなる。そこになんだか妙に合点がいって、妙に可笑しくなった。あと、サントラに収録されている歌を聞いている時に、最初のサビの前になんか変なタイミングで間奏挟んでいるなと思っていたが、劇中でこういう演出が入っていたせいだったというのも、それはそれで納得した。今後、聞くたびにあの映像が頭の中に蘇りそうだ。
まぁそれはそれとして、すずちゃんの歌声は普通に綺麗だし、何より曲自体がいい。この歌のシーンがあったから、電車の中のシーンに対して、好感以上に強いインパクトを受けたのは間違いない。
が、しかしやはりシナリオには問題があった気がする。ファンタジーやSFの要素を取り入れるのは別にいいと思う。問題なのは、上映時間が90分しかないのに、無駄にあれこれ詰め込み過ぎなのと、そのために逆に大事なものが抜けている点である。
抜けているなと感じたのは序盤の展開。ノリミチとなずなの関係が唐突過ぎて、いまいち飲み込めないまま話が進んでいく感じがした。密かに好きというのは構わないが、そこはもう少し丁寧に深く掘り下げて描かないと「主人公とヒロイン」という感じがしてこない。むしろ伝わってきたのは友人たちとの「よくある中学生」という関係だ。それ、そんなに大事か?
それと友人のユウスケ。ポジションが地味すぎる。宣伝をすずちゃん、菅田君、マモさんでやっていたはずなのに、随分地味な印象だ。もっとわかりやすく、主人公をサポートするか、主人公とヒロインを取り合うか、出番の多いキャラクターになっても良かったのではないだろうか。正直、比較的出番の多い友人、でしかない。そもそもこの友人たち。テーマである「花火を横から見ると~」に絡んでくるので必要な人物ではあるのだが、それ以上にやたらと出てくる。こっちは逆に、もっと出番を少なくしても良かったのでは。あまり余計な人物を出し過ぎると、当然、中心人物が霞む。尺が短いのなら尚更だ。
というように、「いわゆる中学生」というのを表現したかったのだろうが、正直無駄でしかない。その分をもっと他の描写に回すべきだったと思う。物語の中心は、ノリミチとなずなのはずだ。
それと最終的な結末も、わざわざ観る側に考えさせるような作りにする必要があったのだろうか。この話はぶっちゃけると、単なる反抗期の家出である。まぁ、あの親ではなずなも色々と苦労しそうだが、それはさておき。ちょっとした家出に、非現実的なファンタジーが加わった話であって、別に何かを考えさせるような内容では無い。であれば、最後は綺麗にまとめてしまったほうが、観る方も色々とすっきりしたと思う。多分、なずなが最後「次はどんな世界で会う?」みたいなことを言っていたから、並行世界がどうこうというSF的な考えになるのかもしれないが、エンディングとして成功したとはとても思えない。
というか、SF的なことを言うのなら、それに関してももうちょっと本編で語るべきだったのだろうが、やはり尺が足りていない。あれこれと詰め込みたいのなら、上映時間がもう1時間は必要だったであろう。正直90分は短過ぎる。
結局、評価するところよりも文句のほうがはるかに多くなってしまったが、なんとなく、「見て損をした」とは思っていない。「思春期の家出」というありふれた題材だが、その点はある程度楽しめたのだから十分である。ただとにかく思うのは、もっとシンプルに、主人公とヒロインに焦点を当てた話にした方が、もっと素直に楽しめただろうということである。