「「お前らにはこういうのが受けるんだろ?」」打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 真原さんの映画レビュー(感想・評価)
「お前らにはこういうのが受けるんだろ?」
「夏」「男女の逢瀬」「繰り返す時間」
この設定の物語に私はひどく弱く、アニメーション映画だけでも、「君の名は」や「時をかける少女」は甲乙つけがたい素晴らしい作品だと思っている。
新房監督、制作会社シャフトが近年手掛けた「傷物語」三部作においても(言いたいことはあるが)エログロアクションシーンは楽しめたし、シャフト特有の表現も決して嫌いではない。
そんな贔屓目を持った私でも、この作品はつまらなく感じた。
登場人物が何を考えているのか分からないまま話は進み、突然、曖昧に物語は終わる。
主人公が時間を巻き戻すとそれまでの記憶が消える(中途半端にフラッシュバックするようだが)ことで、ヒロインを救おうとした気持ちまで一旦消える。
その瞬間に主人公と鑑賞している私たちとの感覚は離れ、主人公がまた救おうと思うまで、誰でもない立場でぼんやりと茶番を眺めねばならないのは、非常に苦痛であった。
90分程度の短い物語であるのに、物語に関係ない担任と生徒のやり取り、程度の低いギャグ、突然始まるヒロインの歌など、何かの伏線であるわけでもない要素があるのも、不満を感じる一要素なのだろう。
時間を繰り返す理屈にしても、あの球が一体何なのか、過去のシーンで何故ヒロインの父が持っていたのか、電車に飛び乗るシーンで(記憶は消えるのに)典道が球を拾った理由や、球が巨大化した理由など、一度見ただけで疑問に思う部分はある。
「君の名は」には自然や街並みの表現に対する並々ならぬこだわりに身震いをしたし、
「時をかける少女」には、時間を繰り返すことで引き起こる問題、残酷さを描いた。
そして両作品とも、キャラクターの心情を、最後まで丁寧に描いていた。
それらと比べると「打ち上げ花火~」は、どうしても見劣りしてしまう。どうしても急ごしらえで作られたように感じてしまう。
「アニメで恋愛、繰り返す時間、人気俳優器起用にキャッチーな主題歌を添えて」
「お前らはこういうの受けるんだろ?」
「こういうのが好きだろ?面白いんだろ?」
という制作陣の声が聞こえてくる気がした。
なずなが駅で着替えるシーンは好きです。