「無償の愛」8年越しの花嫁 奇跡の実話 ちゃーはんさんの映画レビュー(感想・評価)
無償の愛
事前情報や番宣、タイトルから映画2時間の内容や展開がほぼすべて分かってしまう作品ということで、大事なのは脚本というよりは演出。
出てくる登場人物すべてが良い人で、善い人で。どんな作品なのかと、1カットごと注意して観ていたが、途中から感情移入先がひとしくんに定まってしまい、同じ男として、ただただ尊敬。となったことに気がついたときには、こんな男で在りたいなと思った。
何がすごいかって、自分の思う真のアガペーを体現したというところ。恋は感情により右にも行けば左にも行くし上にも下にも行き得るもの。アガペー、つまり真の愛、無償の愛というものは、感情では動かない。意思で決定するもの。
彼女がどんなに重い病気になろうと、会えなくなろうと、動かなくなろうと、親に家族じゃないと言われようと、忘れられようと、他人扱いされようと、関係なかった。出逢いのときに言われた「たのしもうとすること」の大切さを表現していた。
どんなつらかろうと、彼女が1番がんばっていてつらいんだと、だからなんだって乗り越えられる。自分が前向きに生きていなければ、いつか起きたときに悲しませてしまう。強すぎる。目を覚ますまでは、かなしすぎてつらすぎて、という描写がほとんどなかった。それがよかった。
心が折れたのは、自分の存在が彼女のためにならないと分かった瞬間だった。今までは、自分が元気でいることや前向きでいること、毎日会いにいくことで、きっと彼女のためになっていると思っていたから、つらくなんてなかった。けど、彼女のためにならないと分かって、自ら身を引いた。これも愛の本質、あるべき姿だと思う。相手のことを1番に考える。どれだけ自分がつらかろうと。
この2人なら乗り越えられる。この2人にしか乗り越えられない。だからこそ。もちろん、周りで支えてくれた人たちの温かみを含めて、彼らの人生は、美しく彩られていく。存在そのものを愛しているその姿に感動した。
あくまで、お涙頂戴の商業的な「商品」としての映画ではなく、人の生き方や愛を伝える「作品」としての素敵な映画だった。