ムーンライトのレビュー・感想・評価
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何がそんなに評価されているのかが、全然わからなかった
スタンドイン
アメリカ映画界の底力をみた。
麻薬中毒で売春婦の母に育てられる黒人シャロンの鬱屈した、しかしピュアすぎる半生を、極めて淡々と描いた本作は、第89回アカデミー賞作品賞を受賞している。
演出過剰の現代の世の中で、きわめて重厚な人間ドラマをここまで静かに淡々と描く作品は、正直興業的に作りたくても作れないというのが実情に違いない。しかしそれが確かに存在した! この映画を観終わって、(ポスト・トゥルース的な)今日という世界に、かくも純粋な映画を産み落とすことができたハリウッドの「良心」と「奇跡」への礼賛こそ、この作品賞であったのだと私は理解した。
この映画はかなり消耗する。寝不足や体調不良、特に精神的不安を抱えた状態で挑むと、あとが大変だろう。とにかく「強度」がものすごい作品なのだ。人種による貧困、イジメ、犯罪、さらに精神的に崩壊寸前の母親が重要なモチーフとして描かれている。そこに主人公の性的マイノリティも絡んでくる。現代の閉塞感に満ち満ちていて、終始、分かりやすい出口は提示されない。
でも、ちゃんと希望は描かれていた。主人公の内面の、かくも純度の高い「純粋」という精神に。これを現代で描くのは、簡単に虚構になってしまうから至難の業だ。しかしこの映画はそれに完全に美しく成功している。それに心底驚いた。
さて、ここからは好き嫌いの話。正直、私はかなり苦手な作品だった。抑制した演出、という演出が苦手すぎた。もうこれは、どうしようもない話。あとはやはり自分がアメリカ社会に生きていないため、実感からややほど遠いというのも、正直な印象。本来、もっと身につまされる物語なのだろうと想像しながら観ていた。
渋谷の映画館はいまだに超満員。アカデミー賞受賞作の箔付はかくもすごい。もちろん私もそのおかげで出会うことのできた一人だから、やはりありがたいと感じている。作品に出会えるのは、やはり縁だと思う。
ヒップホップIQ/LGBT/せつなくて泣ける
ムーンライト
アカデミー賞の中でもパンチが弱い良質な作品。
ようやく見ることができました。
朝一の上映だったのですが、ほぼ満席。
関心の高さが伺えました。
久々に、どっぷり浸かって見ることができた作品でした。
味わい深いです。
主人公が寡黙なだけに、彼の内面を頭の中で考えることができます。
3部に分かれているという構成もよかったです。
変わるものは変わるし、変わらないものは変わらない。
一度しか肌を触れ合ったことがないという告白。
ずっしりきました。
ドラッグ、いじめ、黒人社会、貧困の格差、親のネグレクト、性的マイノリティーetc…様々な問題が詰め込まれていますが、決して大袈裟ではなく、アメリカの一部社会には、きっとこういう日常が普通にあるのだろうなと思いました。
目を向けていないから気付かないだけで、日本にもこういう暮らしはあるのだろうなと思いました。
「大変だ、大変だ!だから彼らを救おう」という、(24時間テレビ的な)押しつけがましいものではなく、ただ静かに淡々と流れていく映画に好感が持てました。
マイノリティってツライよなぁ
他の方のレビュー、賛否真っ二つに割れてましたね〜。見るに堪えないと思う人がいるくらい、黒人の、しかもゲイなんて気持ち悪い!と思う人が多かったということですよね。
作品賞はララランドが取るべき、という方もすごく多かったですが、アカデミー賞にならなかったら、この作品は見向きもされないのではないでしょうか。
こんなに悲しくて、救いようがない世界もあるんだということは、特に平和な日本人は知っといた方がいいと思います。日本にだっていっぱいいますよ。家庭が不幸だったり、同性愛者だったり、薬物にハマって抜け出せない人…。そういう人たちは、きっとお金払って映画なんて観ることもないでしょうが…。
金子みすゞは「みんな違って、みんないい」と言うけれど、なかなかそうはいかないのが人生。ゲイも、親がヤク中なのも、ヤクの売人が職業なのも、しょうがない人だっているんだなぁと、虚しさを覚えながら観てました。人と違うことは、やっぱり生きづらいものです。
少年成長物語が大好物な私にとって、シャロンがどうか幸せになりますようにと祈りながら話の展開を追っていましたが、ようやく最後のピュアな初恋がフォーカスされたことに救いを感じました。
負の連鎖
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