ムーンライトのレビュー・感想・評価
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筋骨隆々のいかつい黒人男が乙女に見えてくる。また料理シーンなのにものすごくエロい。
鑑賞前の想像と異なり、とても静かなトーンの映画。
いじめやドラッグのシーンはあるものの、全編通して凪のように静かに進行します。
この静けさの中で演者は役の怒り、悲しみ、恋慕を顔の表情や仕草や、立ち振る舞いだけで演じていく。 大男が目のうるみで恋慕を表現するとは。。 凄まじいまでの演技力であった。
画面の色調(建物や洗濯物まで)や、構図がとても綺麗でアートのようであった。 この監督一体どんな人?と思ったら見た目ものすごくお洒落でスマートな雰囲気。 納得。。
後半のケヴィンの家でのケヴィンとシャロンのやりとり。
ケヴィン 「何者だよ? 男、 金の入れ歯、車、強くなったか?」
シャロン 「俺はアトランタでゼロから鍛え直した。お前は?」
ケヴィン 「俺は最低だったよ。浅はかだった。やりたいことは何もせず、周りの言いなりになって流されてた。いまは息子がいて仕事もある。保護観察18か月はクソだがこれが人生さ。分かるか?前とは違う。死ぬほど働いても小銭しか稼げないが、あの頃みたいな不安は抱えていない。」
含蓄深い。。
人種、ジェンダー、マッチョ幻想
黒人差別を扱った作品は数多くあれど、黒人コミュニティのなかの男らしさを強要するようなジェンダー差別に切り込んだ作品は、滅多にない。弱い者たちが夕暮れ、さらに弱いものを叩く。差別の被害者たちもどこかで別の対象を差別している。
本作は、人種的マイノリティの中のさらにジェンダー的にマイノリティの主人公が受ける何重もの苦難を描きながら、美しい恋愛映画でもある。
黒人男性社会のなかのマッチョ幻想はかくも息苦しい。ゲイでひ弱な主人公は、大人になるとマッチョの鎧を着込み、「いかにも」な外見になっている。そうして鎧をまとっていなければ生きられないコミュニティなのだ。
そんな彼が鎧を脱げるのは愛する相手の前でのみ。金歯のグリルを外すシーンが象徴的だ。
人種差別だけではなく、同性愛差別、そして男性社会のマッチョ幻想の抑圧をも描き、愛することの素晴らしさを説く。人が寛容になるために必要なものはなんだろうか。
誰のもとにも優しく降り注ぐ、普遍性に満ちたラブストーリー
息が止まりそうなほど静かで美しい。オスカーを受賞したことを一旦忘れて、ニュートラルな心持ちでじっくりと味わいたくなる作品だ。
ドラッグ、過酷ないじめ、母親による育児放棄、同性愛といった、どれひとつ取っても重くのしかかってくるような題材を描きながらも、独自の色彩美と、月明かりに照らされ胸の中まで透き通っていくかような神秘的な趣が全ての存在を包み込んでいく。決して社会派ドラマなどではなく、これは自分の人生に影響を与えた様々な人たちに向けた純粋なるラブストーリーなのだ。そこにはもはやLGBTという言葉すら必要とすることはない。月明かりが誰のもとにも優しく降り注ぐように、観る人を分かつことのない普遍性がどこまでも広がっている。
登場人物は少ないが、誰もが印象的だった。彼らもまた、それぞれが月のように独自の輝きを放ち、様々な意味で主人公を照らす。人が歳を重ねて、成長していくことの意味を改めて教えられたような気がした。
静かな作品。セリフが限られている分、全てのセリフが良い。
「黒人はどこにでも行ける」。
ラストでシャロンがレストランのドアをじっと見つめる意味深なシーン、かつてフアンに言われたこの言葉がよみがえっていたに違いない。
レストランというのも大事なポイント。フアン、テレサ、ケヴィン。シャロンに食事を提供してくれるこの3人が、シャロンが心を許す数少ない人物である。
フアンがシャロンに水泳を教えるシーンでは、美しい映像で深い意味合いを伝えてくれている。
アメリカでは、黒人は泳げる人が少なく水難事故に遭いやすいことが社会問題となっている。つまりフアンには、シャロンの命を守りたいという父性まで芽生えているのだ。また、「黒人はどこにでも行ける」というセリフにもつながってくる。昔は海もプールも差別で入れなかったがそれは大きな誤りで、黒人はどこにでも行けるのだ。
「月明りに照らされ黒人の子供が青く見える」という表現も、何とも詩的で美しい。シャロンとケヴィンが結ばれたのも、月明りに照らされたビーチ。フアンとの思い出の場所でもある。
海が特別美しい街なんだろう…一体、どこ?と調べると、マイアミが舞台の物語だった。なるほど、だから登場人物がほぼ黒人なのね。ざっと観た感じ、白人っぽかったのは、ドラッグ更生施設にいたエキストラのかなりボンヤリ映る後ろ姿くらい。恐らく施設職員なんだろうけど…富裕層の白人はクスリ漬けになったりしない土地なんだろうね…。
人種、貧困、LGBT…あらゆる問題を美しく描いた作品だった。
子供の世界の狭さと大人の世界の広さ
子供の世界の狭さと大人の世界の広さについて考えさせられる映画だった。
子供は家族と学校が人間関係の全てと言っていい。当然、付き合う人間関係はその範囲から選択しないといけない。金も無いし住む場所も自分の意思で選択できないし、できることも限られる。だが大人は違う。自分次第で無数の選択肢を持つことができる。シャロンは少年院に行ってヤクの売人にはなった。しかし、そのことがきっかけで彼なりに納得する人生を歩むことができた。広い世界の中で、自分の居場所を見つけることができたのだ。
ストーリーはというと淡々としていて盛り上がりに欠け、あまり面白いとは思わなかった。しかし、一人の人間の成長を、リアリティある描写で観ることができたのはよかった。
アカデミー作品賞の発表が間違いでなかった方が…
私にはなかなか理解の及ばない同性愛と
覚醒剤売人の世界の物語だった。
そもそもが説明不足な演出に感じ、
特段の上手さも感じられることはなかった。
同性愛の経験があったとしても、
何故、シャロンはこれまで
異性との関係を持たないできたのか、
亡きフアンの妻との接点が
あったにも関わらず。
他にも、
フアンは殺害されたのだとは思うが
何故死因に触れないのか。
彼が子供のシャロンに目を付けたのは
切っ掛けは単なる偶然で、
仕事のために手懐けようとしたのだとは
思うのだが、それ以上に、
彼に己の生い立ち的符合性を見出したから
等の理由があったからなのか、
肝心なところに何かと説明が欠けている
ような印象で、
“1.リトル”からモヤモヤ感が支配する
鑑賞になってしまった。
また、総じて、シャロンの思索の変遷も
上手く描かれているようには
思えなかったし、
「自分の道は自分で決めろよ、
周りに決めさせるな」
とのフアンの教えにも関わらず、
フアンの場合は自省を込めての
言葉だったとしても、
シャロンの主体性の無い人生と、
結果、フアンと同じ覚醒剤の売人に
甘んじる展開と、
結果的に人生の恩師のようなそのフアンを
超えることの出来なかったシャロンに
どう共感すればよいのかも分からなかった。
アカデミー作品賞、
キネマ旬報ベストテン第9位と、
共に「ラ・ラ・ランド」を上廻る評価を得た
作品ではあるが、
(但し、読者選出では「ラ・ラ…」の第1位に
対し、「ムーン…」は第11位と逆転)
作品全体の作りは「ラ・ラ…」の方が
優れていた印象だ。
もっとも、私の中では、
こんな風になれば良かったね的な
「ラ・ラ…」よりも、
同じミュージカルで似た設定の、
現在の“家族”を大切に、
過去を振り切る男性の想いが感動的な
「シェルブールの雨傘」の
上を行くものでは無かったのだが。
幾重にも
むずいな〜
月の光
いじめられっこの顛末
2019年の映画だからこそ
アカデミー賞とか傑作とかにつられ視聴
観て後悔はないけど、傑作ってこんな感じ?!
少年期、青年期、成人期と話がすすみ
さあどうなるの?!と思ったら話が終わりました。モヤモヤするほどの答えを求める作品でもないので、へぇ〜って感じ。なんとなく注視して鑑賞できるところがさすがアカデミー賞受賞作。
いい映画だけど
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