ムーンライトのレビュー・感想・評価
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映像としては素晴らしい。期待のA24だが、
久しぶりに超純愛映画を観た
抑えた表現に疼く興奮
A24はいい作品が多い
みんな違ってそれでいい
枠にはまらない
救いがない
Littile(いじめのあだ名), Chiron(本名), Black(本当の自分ではない自分)の三期で語られるストーリー
原作のタイトル
"In Moonlight Black Boys Look Blue"
から、大人になってからのBlack期は、子供の頃 Blueに見えていた「本当の自分ではない自分」
薬で壊れた親より、代わりに優しく接した売人の方が正当化され、自分も売人になってしまうという
救いがない話に感じた
心に残る台詞
Can’t let nobody make that decision for you
自分の意思でBlackになったけれど
ラストで友人に告白したのは
Chiron だった時からの本当の気持ち
Chironは穏やかな気持ちで終わるが
観ている方はもやもやが残る
Blackの中にも色々な違いがあること、ステレオタイプ的に認識しがちなBlackではない中間色があることに気づかされた
そうするしかないどうにもできない辛さ
努力すれば変われるなどという単純な問題ではない、根深い、黒人差別と貧困層の地域的な問題が人々の人生に世襲されてしまっている。
マイアミの黒人ばかりのダウンタウン。父親が元々いない家庭の少年シャロンは小さいからリトルと呼ばれ虐められている。母親は父親不在な中食べていかないといけないからドラッグとは繋がりやすい売春業、ろくに仕事もないからこそ、ドラッグ依存でネグレクト。
家庭により様々だがそういうコミュニティだからこそ子供達もいじめに走りやすいのだろうか?そこはわからないが、シャロンは口数もほぼなく、弱々しい歩き方で絶好の対象にされている。
シャロンと知り合い、温かく接してくれた同じ地域に住む成人男性フアンは、金銭的に困っておらず精神的に余裕がある理由はドラッグの売人だから。シャロンにとっては救世主だったけれど、シャロンの母親にもドラッグを売っているのがこの地域の問題の根深さを表している。
心の居場所がフアンとその彼女が住む家にしかなかったシャロンは、そのまま高校生に成長するが、子供の頃唯一気にかけてくれた友達に男同士だがほっとする恋愛感情を抱く。友達は彼女もいるしおそらくバイ。
フアンに泳ぎを教わった思い出の海に、フアン亡き後の思春期にも虐められ悲しい気持ちで訪れたシャロン。そこでたまたま友達に出くわすが、友達は、シャロンの家庭環境など身動きの取れない悲しい状況を知っている。2人の海沿いでのキスシーンは、あまりにも重苦しいシャロンを人間として最大限慰めたい癒したいと思った気持ちが性別を超えただけのように見える。
しかし、その友達も悪い同級生に逆えずシャロンを殴り裏切る。幼い頃からシャロンの心はどれだけ背負い耐えて来たのか、映像だけでもはたから見ていてもかなり辛い。そしてそれが誰のせいでもなく、怒りに変えたとしても行き場がないことが余計に辛い。
母親はもう少し努力できたと思うが、思春期には完全にドラッグに溺れ依存症人生の母親。責めたからと言って今更どうにもならない。
それに気付き、強い人格に変わる事を始めたシャロン。第3章ブラック。虐められて怪我した顔を氷水で冷やして新生シャロンが”ブラック”として覚醒。まずはいじめ首謀者を椅子で殴り少年院へ。
10年後。かつてのフアンと同じ、金の歯カバーでかつてのフアンの車を乗り回し防御万全のシャロン。仕事もフアンと同じ、ドラッグ売人。普通の売人からのしあがり、フアンのような売人のトップに昇り詰めたということだが、かつて母親のドラッグ依存に苦しめられた張本人のシャロンがまさかドラッグを売るなんて。でも、シャロンにとって唯一の人生のお手本兼親がわりがフアンだったのであり、そうするしか生きられない社会の構図。
友達も院に送られ、そこで覚えた料理がきっかけで料理人としてバツイチでレストランのコックになっていた。
大人になってからの2人の再会。友達から裏切りの謝罪をされ、友達の店で友達が作った料理を食べ、音楽を聴く。そして互いのこれまでを労わりあうかのように、シャロンは再び前回ぶりの同性愛へ。
とてつもない哀しみ寂しさ辛さを押し殺し、しかもそれが普通の毎日として繰り返され積み上げられていくシャロンの人生を通して、「同性でも歳上でも家族でなくても、人間が人間を頼ったり、愛情で包むことはできる。もし受け入れてもらえて甘えられる環境があるのなら、それが家族でなくても同性でも、死ぬより全然良い。困っているならこっちにおいで。」そう叫びたくなる作品。フアンの妻テレサのような、心が張り詰めただれかが逃げ込めるシェルターのような存在になりたい。
孤独な魂の止まり木
鳥肌が立った。
素人が撮ったのかと思うような映像で始まる。
『シティ・オブ・ゴッド』のUSA版かとも見まがうが、
次第に、その繊細な映像・語り口に惹きこまれていく。
暴力的な、先のない社会の中に隠された繊細な想い。
お互いの想いを確かめながら、踏み込めぬ、そして近づいていく関係。
「月明かりの中で~」あぶりだされる想い。
息をひそめて見守りたくなる。
リトル。
高校生のシャロン。
ブラック。
風貌も何もかも似ていないのに、そこに、”シャロン”がいる。
その風貌・物腰の変わりように、環境から受けるものの大きさにやりきれなさを感じつつ、
「自分が何者であるかを他人に決めさせるな(思い出し引用)」の言葉の重さをかみしめる。
それぞれの役者をキャスティングした監督の才覚に喝采。
心を閉じつつも、ファンやテレサ、ケビンを縋りつくように、疑うように見つめるリトル。
諦めきっているけれど、心を殺さずにいろいろな思いを抱える高校生のシャロン。
ファンと同じ格好で、ファンと同じ王冠を車に乗せて、日々の暮らしを行うブラック。
だが、ケビンと相対するときの、その時々の表情が愛おしい。
そんなシャロンを追っているだけなのに、心の奥底が打ち震えてくる。
売人でありながらの苦悩、わが子への愛にも似た愛情をこれも繊細に表現したアリ氏。
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』『ベンジャミン・バトン』でも温かい父を演じておられた。
でも、私は、ハリスさんにも賞を献呈したい。
そんな役者の妙技を彩る、色彩の映像。ある場面はくっきりと、ある場面はしっとりと。ある場面はまがまがしく。
そして、ここにこの音楽を合わせるかというセンス。
ファンとの楽しい水泳教室には、不協和音にも似たバイオリンの音色。
母との苦しい再会の後の『ククルククパロマ』
他にも、他にも。
カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』にオマージュを捧げたと聞く。
でも、私は、間の取り方とか、なぜか『BIUTIFUL ビューティフル』を思い出す。
『ブエノスアイレス』のように、激しい激情に翻弄された二人の関係性に心がキリキリするというよりも、
『BIUTIHUL』のように、静かに静かに、地下の水脈のように激情が心の奥底にたぎっていくような味わい。
そして、当たり前のことにも気づかされる。
白人にも、ポーランド系とか、スコットランド系とか、ラテン系とかいるように、
黄色人種にも、日本人もいれば、チャイニーズとかコリアンとかいるように、
黒人も、ルーツはアフリカでも、アフリカ系もいれば、キューバ系もいる。
派手な映画ではない。一見わかりやすそうで、人物のささいな表情を読み取っていかないと、何の面白みもない。
だけど、
こんな詩的で繊細で、地味でありながら、映画でしか表現できぬ余韻を味わえる映画が評価されるなんて、USAのアカデミー賞も捨てたもんじゃない。
人生の生き方
切なさに胸を突かれる名作
観終えた直後、息苦しいほどの切なさを感じて、じっと考え込んでしまいました。
主軸となるのは一途なラブストーリーですが、それだけでは言い表せない深みをもった映画です。
主人公の幼少期から大人になるまでの半生を3つの章に分けて追いながら、主人公と周りの人々との関係を、印象的なシーンを繋ぎ合わせて描写しています。
前半はやや出来事と出来事の間の繋がりが見えにくいため、もどかしく感じるかもしれませんが、後半では前半の出来事が主人公の内面にどのような影響を及ぼしたのかが描かれ、手堅く伏線を回収しています。ハイライトとなるシーンはやはりラスト。息をのみました。
初めて観る方は、ぜひ、この映画の映像での「青」の使い方に着目して鑑賞してみてください。この映画にこめられたメッセージを受け取ることができると思います。
人生における忘れがたい一瞬一瞬を、繊細で美しい映像で切り取った名作でした。
しみじみと良かった
VODで観たので、映画館で観たらもっと映像が美しかったんだろうなぁと思うけど、ストーリーもとても良かった。1人の人間の人生を追っていく話で、派手な映画では無いけど、しみじみととても良かった。大人になって、料理人になったケビンと会うシーンは胸キュン過ぎて、ちょっと観ては止め、ちょっと観ては止め、ゆっくり観た。最後はどうなったんだろう。それから先はどうなるんだろう。貧困やジェンダーの問題が背景にあるけど、それよりも主人公の人生にそっと寄り添うような映画で、ぼんやりとした儚さ優しさ。画面にはなんとなく不穏な気配もあって、何か悪いことが起きるんじゃないかとハラハラしてしまった。特に何があるわけでもないのに、日常の中で何か悪いことが起きるんじゃないかと考えてしまうことはあって、そういう感じがした。シャロンには実際にわりと辛いことも起こっていたけど。
自分自身を取り戻す
本当の自分に気付き、認めるまでを
臨場感あるカメラアングルで描いています。
ファンが言った「自分の人生は自分で決めろ。他人に決して決めさせるな」という言葉が、胸に刺さりました。
また、母の言った
自分を愛しなさいって言葉も、この映画の大切な要素だと思います。
間と色彩美を贅沢に使った重く美しい作品
マイアミの貧困地区で暮らす孤独な少年、シャロンの半生を描いた作品。
青を基調とした切ない風景の色遣い、言葉少なに間を多く取る演出をベースに、幼少期、ティーンエイジャー、青年期の3つの時代のシャロンを描いた今作。
黒人文化、LGBT、貧困問題に麻薬問題と現代に通ずる重く難しい題材を全て盛り込み、成長していくシャロンを描いた今作は第89回アカデミー賞において作品賞を始め、3部門に輝いた。
今作幼少期からティーンエイジャーにかけて重く悲しい展開の連続がシャロンの身に降りかかり心が折れそうになるが、その中で唯一の希望とも言えるのがファンとテレサ夫妻である。
海で泳ぎを教えながら人生は自分の力で乗り越えなければならないと強さを教えてくれるファン、温かいご飯と優しい言葉で安らぎを与えてくれるテレサの2人の存在がシャロンにとって大きな支えであり、特にファン演じるマハーシャラアリのムキムキの体つきから予想だにしない、優しい眼差しでシャロンを見守る姿のギャップが素晴らしかった。
幼少期のトラウマから自身を偽って成長したシャロンが、ファンと同じように麻薬の売人として日々を送る中でようやく向き合うことのできた母ポーラとの和解とかつて友人以上の思いを寄せていた親友ケヴィンとの再会を通して、ありのままの自分を取り戻せたと感じさせる、青年期のラストに目頭が熱くなった。
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