「面白かった。確かに面白かったけど…これはやはり舞台劇だ。」散歩する侵略者 豆腐小僧さんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった。確かに面白かったけど…これはやはり舞台劇だ。
いや面白かったですよ。いい意味でも悪い意味でも面白かった作品。しかしこれは、残念ながら映画としての面白さではなかった。
元々この作品は舞台原作と聞いているが、その延長線で劇団芝居を映画の体でみせられてる感がハンパないのだ。ほら、劇団新☆感線を映画で観ようみたいな感じ。
純粋に映画作品という視点で見れば、何より黒沢監督の詰めの甘さが目立つ単館「インディーズ映画」という趣か。間違ってもロードショウ作品ではないのは確か。
とにかくガンアクションや兵器の描写が雑、すべてに「映画的なリアリティ」がない。映画にガチガチなリアリティは必要ないが本当に見える(思える)ウソは必要なのである。それがないととたんにチープで稚拙になってしまう。
まずマシンガンで撃たれて動き回るのはまぁ「エイリアン憑依してるからね」補正でいいけど、銃創がまったく違う。今時マンガでもあんな銃創は描かないよ。
唐突に登場するブレデターの放つミサイルはターゲットをまぁ外す外す。あれは衛星と連携した必中兵器なので、まずターゲットはずさない。仮に直撃はなくても普通は爆風で簡単にバラバラになるか衝撃で死ぬ。爆風で衣服は吹き飛び裸状態になる。しかもこのブレデター、エイリアンばかりを狙い、横で怪しげな怪電波を出してる中継車は放置かい!衛星監視してたんだろ!と小一時間(笑)
何よりこの唐突な日本の監視衛星設定がもうね、あまりにご都合過ぎ(笑) アメリカ映画の見過ぎだろう。走り回る車をそう都合よく衛星は見つけられない。監督は「衛星軌道」という言葉を知らないらしい…。
とにかくこの辺、監督の不勉強さに呆れる。あまりに詰めが甘いというか、脳内ご都合主義すぎる設定と演出だ。
それからCGがクッソしょぼい。泣きたくなるほどしょぼくて、終末に襲ってくる火の玉の到来などはもう一昔前の東映の特撮モノか!と突っ込みたくなるほどの表現でズッコケた。失笑モノである。
それから…これは特に言いたいのだが、撮影監督がひどい。なんか眺めてるような撮り方に終始してるし、ハンディはぶれぶれだし。人物をうまく押さえきれてないから心理描写もいまひとつ弱い。なんでこんなの使ってるのか?
それでもまぁそこそこ面白かったのは、実は前出の通り「舞台劇を引きずっていたから」というなんとも皮肉なものだった。そこで唯一この映画をSFファンタジーとして担保できたのじゃないかと思う。うん、ぜひ芝居の方も観てみたいものだ。
───以下、その他雑感
長澤まさみ怖かった(笑) 彼女は怒ると三白眼になるのね。あとどうにも声が嫌いなんだよなぁ…キツい嫁な役にはぴったりか。旦那が浮気するのもまぁ…
この映画で光っていたのは、長澤まさみでも松田龍平でもなく、意外にもエイリアンを演じる高杉 真宙だった。その個性的な顔立ちと飄々とした演技で存在感があった。ダメなジャーナリスト役の長谷川博巳との掛け合いもなかなか面白かった。これからに期待。