「宇宙人のリアリティ」散歩する侵略者 hhelibeさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙人のリアリティ
原作の舞台版は再演を観劇済み(って言ってもほとんど忘れてたけど)。
演劇は日本人が欧米人を演じても、素舞台を「ここは未来都市」って言っても、観客が想像力で補填してくれるので、荒唐無稽な設定も受け入れられやすい。でも映画はそうはいかない。
同じイキウメの映画化でも、入江悠監督の「太陽」はもう少し映画にしやすかったと思うけど、この話は何しろ宇宙人が人間を乗っ取って地球に侵略してくる。そんな話をリアルな現代日本の話として映画にするのは並大抵のことじゃないと思う。
それをここまでリアリティを持って観られたのは、なにより役者の力が大きかったと思う。
まず「しんちゃん」の松田龍平。「身体を乗っ取った宇宙人」役に、これ以上適任な人はいない気がする。何を考えているのか分からないし、立っているだけで違和感がすごい。
怒ったり戸惑ったりしながら夫に対する想いを変えていく長澤まさみも、半信半疑で宇宙人と行動を共にするアウトローな長谷川博己もよかったし、飄々としつつ人間を観察する宇宙人の高杉真宙も印象に残った。
ただ、「概念を奪われる」というのがどういうことなのか、いまいち納得がいかないというか。
例えばデザイン会社の社長が「仕事」の概念を奪われた途端子供みたいに遊びだしたけど、「仕事」の概念がなくなったからってあんなに白痴化するのは違うような。
「何やってたんだろ、馬鹿馬鹿しい。会社は解散。旅行でも行ってくるわ」って会社を出て行くとか、もっと違うアプローチがあった気がする。
あと、ラストの侵略シーン。火の玉みたいなのが飛んできて、「え、火!?」ってなった。人間には姿も見えないような別次元の宇宙人なのに、攻撃は火の玉なの?っていうか、火だと人間以外の生物も死んじゃうし、火で焼くんなら人間の概念とか知る必要ないような。。
「その星で一番知能の高い生物を調べて、それにより侵略するか残すか決める」ってことなのかなぁ。
一番好きだったのは、長谷川博己演じる桜井がそのへんの人に「こいつらは宇宙人だ!早くしないと手遅れになる!」って演説した後、「一応言ったからな…」と呟いて、普通にまた宇宙人と合流する所。
いやいやいや…wと思いつつ、人間ってこういう不合理なところあるよねーと、妙に納得してしまった。
でも実は、なるみも桜井も最終的には自ら宇宙人に協力してたように見えて、本当は少しずつ洗脳されてたりして…。