「ラスト・ヤクザ」アウトレイジ 最終章 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ラスト・ヤクザ
テメェ、バカヤロー!コノヤロー!ブチコロスゾ!…も聞き納め。
1作目は久々にバイオレンスの世界に復帰してのあの手この手のド派手な殺し方や悪人には見えないキャストたちのハマり過ぎの悪人演技が絶品で、2作目は騙し合い、腹の探り合い、派閥争いで話にさらに面白味が増し、本格やくざ映画として近年最高級であった。
で、待望の最終章。
結構賛否あるようだが、今回も面白かった! 前作が好きなら今回も満足だろう。
『アウトレイジ』シリーズは、どう見るかで好みが分かれると思う。凝ったユニークな殺しだけが好きなら1作目、やくざ抗争や大友のドラマなど話そのものが好きなら2作目や本作。
今作は大友の終着としてもしっかり描かれてるし、そこに北野流美学も感じられた。
まず、本シリーズの話題である豪華キャストやバイオレンス描写などについて。
顔触れは1作目2作目の頃とかなり変わった。何とか生き残った古参に加え、新参の面々。
北野組は3度目だが、“大友組”は初参戦の大森南朋はアニキをサポート。
久々の北野組となる大杉漣、岸部一徳は嬉しいし(寺島進にも出て欲しかった!)、初参戦のピエール瀧ら面子がもうサイコー!(≧▽≦)
確かにバイオレンス描写はシリーズが進むにつれ抑え気味に。ユニークな殺し方は「ここにいるよー!」と“花火”くらいか。
が、痛々しさや静寂を突然破るインパクトは健在。
それと同じくらい本シリーズの目玉である漫才の如き言葉の殴り合いも所々はドスを効いててもこちらも抑え気味。前作の某4人の応酬みたいなのが無かったのが何とも残念! 本シリーズを楽しみにしてる理由にそれもあるのに。
また、三浦友和、加瀬亮、中野英雄らの不在もストーリー上致し方無いとは言え、やはり残念。
特に、小賢しいクセ者・小日向文世の不在は大きな痛手。今回、彼に変わるようなキャラが居なかった。
核爆発級の凄味と怒号で魅せてくれた西田敏行と塩見三省だが、ちょっとパワーダウン感が。
数年前に大病を患った塩見氏。激ヤセした姿は痛々しいが、それでも続投してくれた役者魂に感服。
それにしても、声を出すのもやっとの塩見氏より、ビートたけしの方が滑舌が悪いって、どゆこと??
前作製作中に本作の構想もあったのも頷けるほど、作風も展開もほぼ同一トーン。
巨大組織同士の抗争、裏切り、裏と裏で誰が繋がってるか。
誰が生き残り、誰が殺られるか。
最後まで飽きさせず楽しめたが、やはり本シリーズは大友の生きざま。全作改めて通して見ると、そう感じる。
1作目では上にいいように利用され、2作目では再び抗争に巻き込まれ…。
大友はアブナイやくざだ。でも根は子分思いで、昔気質の人情味ある“アニキ”。
争いに巻き込まれるのも勘弁。いつも啖呵切ってるイメージだが、「もういいよ」と身を引こうとしたのも何度あった事か。
死んでいった子分を偲び、大量の血を流した十字架を背負ったまま、本当はこのまま静かに風化したい…。
…が、それでも、どうしても、やらねばならない事がある。
自分によくしてくれたフィクサーへの恩義。
因縁ある花菱会、山王会との決着。
やくざとして生きた自分の人生のけじめ。
緊迫感は充分だが、意外と淡々と静かでもある。『アウトレイジ』シリーズとしては物足りないかもしれないが、北野作品としてならば意外でも何でもない。
多くを語らず、詩的な映像で魅せる。
あの終わり方も良かったと思う。
『HANA-BI』以降バラエティーに富んだジャンルを手掛け、再びこの世界に返って来た。
争いの果ての大友の末路は多分誰でも予想は出来るだろう。
思い残す事無くけじめを付け、やっと安息の時を手に入れたのだ。
北野流滅びの美学に、自らの運命を受け入れた漢の生きざまを見た。