「北野作品としては成功するだろうけれど、ビートたけし作品としてはスベっている。」アウトレイジ 最終章 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
北野作品としては成功するだろうけれど、ビートたけし作品としてはスベっている。
"ヤクザ(任侠)映画"というフォーマットは、すでに死んで久しい。
それは"暴対法"や"排除条例"を遠因とする常識の変容にある。犯罪映画なら可能だが、ハードボイルドに組織を美化したフィクションは、コンプライアンス問題になりかねない。
いまや任侠モノは、時代劇のひとつであり、"冷戦時代のスパイ映画"や"西部劇"と同じく、様式美だけをなぞって作ることはできても、日本を舞台にして簡単に銃を撃ち合ったり、指をツメまくるのは、もはや"コント"である。いま風なフィクションとしては、おそらく「新宿スワン」シリーズ(2015/2017)がリアリティの限界だろう。
北野武監督の「アウトレイジ」(2010)は、それを逆手にとったバイオレンス・コメディだった。昔からのファンなら馴染みのある、"ビートたけしのオールナイトニッポン"で飛ばしまくった、"ヤクザあるある"のネタの集大成なのである。
しかし、多くの人が指摘するとおり、回を重ねるごとに斬新さが薄れていく。本人の意に反して(おそらくワーナーの思惑で)、続編が作られ、もうやることがないのである。
この映画の正しい見方は、"大笑い"することである。タチウオを拳銃で仕留めるくだりはドッカーンと大爆笑にならねばならない。しかし初日に馳せ参じた観客は、大半が静かに凝視してしまうとは、もはや本来の目的を終えている。
北野作品としては成功するだろうけれど、ビートたけし作品としてはスベっている。
とはいえ、そうそうたるメンバーが顔を連ねるオールスター映画は、見応えがある。北野武作品だから可能だともいえる(おそらく断れない)。
レギュラーの西田敏行、塩見三省、白竜はもちろん続投するが、第2作までに大半を殺してしまったので(笑)、新しい顔ぶれが登場する。とくに前作からの5年間に名を上げたピエール瀧が重要な役を演じ、そして大杉漣、岸部一徳が初出演というのが意外だ。原田泰造、池内博之なども参加している。
シリーズを楽しんできたファンは、その最期を見届けるべきであり、監督自ら、主人公の"大友"に終止符を打つ。
(2017/10/7/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)