覆面系ノイズ : インタビュー
中条あやみが描く天井知らずの成長曲線 女優としての覚悟に迫る
人気モデルで女優の中条あやみが、三木康一郎監督の最新作「覆面系ノイズ」に主演し、さらなる飛躍を遂げようとしている。中条にとっては実り多きという意味で、変化に富んだ1年だった。昨秋から日本テレビ系「アナザースカイ」の5代目女性MCに起用され、専属モデルとして活躍してきたティーン誌「seventeen」卒業後、11月からは女性ファッション誌「CanCam」の専属モデルとなり、いきなり単独表紙を務めた。そして、あらゆるメディアを席巻し続ける中条に、「歌手」という新たな肩書きが加わる。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)
福山リョウコ氏の人気漫画を実写映画化する「覆面系ノイズ」は、奇跡の歌声を持つ女子高生の有栖川仁乃(ありすがわ・にの)が、離ればなれになった初恋の相手・モモ(小関裕太)に自分の歌を届けるため、幼なじみのユズ(志尊淳)とともに覆面バンド「in No hurry to shout;(略称:イノハリ)」のメンバーとして、音楽活動に取り組む姿を描いている。劇中でバンドを組む中条、志尊、磯村勇斗、杉野遥亮は、今作のエンディングテーマを手がける「MAN WITH A MISSION」が書き下ろした楽曲「Close to me」でメジャーデビューを果たす。
オファーを受けた当初から歌うことが前提としてあっただけに、中条に戸惑いはなかったのだろうか。「なんで私なんだろう? って思いました。歌が得意ですと公表しているわけでもなかったし、むしろ苦手だってウィキペディアに載っていたはずなんですけどね。ふふふ」。
天真爛漫な笑みを浮かべる中条だが、今年3月に公開された「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」で同世代の女優たちの切磋琢磨した経験が、これまでよりもひと回りもふた回りも大きく成長させていた。「難関というか難題がきたなと思いました。『チア☆ダン』の時は、踊りがすごく苦手だったんです。ただ、役を通すことで最終的に好きになれました。今回ももしかして好きになれるかもしれないとチャレンジしてみようと思ったんです」。
昨年8月からボイストレーニングに通い、紆余曲折を経て、本編では見事な歌声を披露するまでにいたった。前向きな気持ちも奏功したようで、「不安や恥ずかしさもあったのですが、と同時に楽しいという気持ちもあったんです。それは、ニノを演じていたからこそ、そう思えたのかもしれません。ボイストレーニングを初めて間もなく、MAN WITH A MISSONさんが曲を完成させてくださって、『この曲を他の人に歌ってほしくないな!』という思いが沸いてきたんです」とニッコリ。だからこそ、「メンバー全員とスタジオで音を合わせるシーンでは、青春だなあ!と思ったら感動して泣いちゃった。そこは泣くシーンじゃなかったんですけどね。そこからです、自分が徐々に歌を好きになっていくのが分かってきて、変わることができました」と刻々と変化していった胸の内を吐露した。
中条が銀幕デビューを果たしてから、まだたった3年しか経過していない。いきなり主演に抜てきされた「劇場版 零 ゼロ」撮影時は、きっと右も左も分からなかったはず。そこから「ライチ☆光クラブ」「セトウツミ」(ともに16)、「チア☆ダン」とタイプの異なる作品でこつこつとキャリアを積み重ねてきた。
「『チア☆ダン』までは高校生をしながらお仕事をしていましたが、あの作品で初めて自分と向き合えたように思えます。10代最後というのもありましたし、広瀬すずちゃんをはじめとする年齢の近い女の子たちと一緒にお仕事をさせて頂いて、みんなのプロフェッショナルな役との向き合い方を見て、すごく考えさせられる部分があったんです」
それだけに今作では当初、“座長”という立ち位置を意識し過ぎるほど意識したという。「インする前、いや、インしてからもですが、役どころとしてもキーパーソンになってくるので、座長としてしっかりしなきゃという思いはありました。『チア☆ダン』ですずちゃんの姿も見ていたので。ただ、いざ現場に入ってみると、座長と意識すればするほど役に集中出来ていないことがわかりました。いろいろなやり方があるとは思うのですが、私は自分が座長だとは思わない方がいいんだ、それが自分のやり方なんだって気付く事ができました。役をきちんと演じたいから、まずはそこに集中しようと思いましたね」
おっとりとした口調で、吟味しながら言葉を紡ぎ出している姿を見ると、20歳であることを失念してしまう。きっと今は挑戦したい事があふれる程あるはずだ。これからの1年、中条はどこに軸足を置いて活動しようとしているのか。
「それをずっと考えているんですが、まだ答えが見つかっていないんです。だから、まずは何事も丁寧に、ということだけはぶれずにいたいなというのがあります。答えが見つかっていなくとも、そのあいだ丁寧に向き合っていれば、どこかで答えが見えてくるのかもしれないなって思っているんです」
そして、映画というメディアで女優として活動する事についても聞いてみた。中条は今作以降、既に「3D彼女 リアルガール」への主演が発表されているほか、公になっていない作品も控えている。今後ますます、その一挙手一投足に注目が集まることは必至だといえる。
「今でもモデル出身って気持ちがあるので、女優……、それも映画女優って何だか不思議な感じですね。でも、そう言われるからには納得されるような人になりたい。銀幕といったら、夏目雅子さん、浅丘ルリ子さん、原節子さんのお顔を思い浮かべます。そんな魅力のある人に自分もなりたいですね。そして、西川美和監督とお仕事をするのが夢なんです。『溺れるナイフ』の山戸結希監督ともご一緒してみたい。映画のキャリアが女性の監督(安里麻里)から始まったので、また女性の監督さんとお仕事をしてみたいなという思いがあるんです」