「MESSED UPな17歳のリアルな青春に笑い泣き。」スウィート17モンスター 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
MESSED UPな17歳のリアルな青春に笑い泣き。
惨めで悲惨でめちゃくちゃ(messed up)な青春。だけど、同時にとても痛快で気持ちのいい青春ストーリー。よく練られた脚本と、ヒロインのユニークで魅力的なキャラクター、そして活き活きとしていてユーモアで溢れたセリフは、「17才の少女の成長の物語」なんて単純な言葉では表現しきれないくらいに青春の痛ましさや苦しさなんかをリアルに描き切っていて、大人が観ても思わず共感してしまったり感心してしまったりしながら楽しめる鮮やかなコメディ映画だった。
何しろ、ヒロインであるナディーンの放つユーモアと機知に富んだ軽妙な語り口は、かつてエレン・ペイジが見せた『ジュノ』を彷彿させるくらいに快哉。音楽活動にも従事している主演のヘイリー・スタインフェルドはリズム感や音感の良さが活かされているのか、セリフ回しが絶妙でさり気ないセリフで「クスッ」と笑わせてくる。しかし、そんなナディーンの軽妙でウィットに富んだ語り口の裏には、いつも自己卑下と自己防衛が潜んでいて、美人でもなく(いや、ヘイリー・スタインフェルドは本来十分に美人だけれど)、モテもせず、学園カーストの最下層にいる自分を常に卑下し、そしてそんな自分を守るために、言い訳を繰り返しながら必死でもがいている。そうやって放たれる言葉が、時に人を遠ざけたり傷つけたりするのに、ナディーンはそうやって自己卑下と自己防衛を交互に繰り返すしかできない。そんな様が、痛ましくも可笑しくて、やっぱり共感できてしまう。
ナディーンがこの映画を通じてたどり着く結論は、ごくごく当たり前のことかもしれないし、考えるまでもない程ありきたりなものかも知れない。だけど、自分を主人公にした自分の世界を変えることができるのは自分しかいないのだと、彼女は不器用にも大きな遠回りをしながら学んでいく。その都度しくじって、すってん転んでmessed upな状態に陥りながら。その不器用さがなんとも愛おしくやっぱり可笑しくて思わず笑い泣き。ちっとも爽やかじゃない。少しもロマンティックじゃない。でも、だからこそ誠実でヴィヴィッドな青春映画の佳作だと思った。
主演のヘイリー・スタインフェルドの健康的な佇まいは、惨めな学園生活をいじけて過ごすだけではない強さを感じさせて(ちょっとした下ネタくらい余裕で撥ねつける爽快さも含めて)とても良かった。ほとんど出ずっぱりの状態でどんどん観客を引き込んでいく吸引力もあった。そしてナディーンの第2の父親の象徴として君臨するウディ・ハレルソンの気の利いた存在感もとても良かった。