「幸せは、誰にも分からない」夜明けの祈り nagiさんの映画レビュー(感想・評価)
幸せは、誰にも分からない
考えさせられる。修道女である彼女たちは、イエスを拠り所にして生きている。本編中でも、「信仰とは、最初は子どものようなもの」だと言う。信じているのにも関わらず、理不尽にも突然その拠り所を失う時があり、そこで道に迷うのである。
彼女らはその時、どのようにして生きてゆけば良いのだろう?
信じていたものに突如にして見放される。不条理な困難に襲われる。そこで信心を失いかける彼女らはどう生きるのか。
熱心な信仰によるプライド・正義心と、理不尽性とがもつれ合い、視野が狭まり道を違う者もいる。そしてそれによって負の連鎖が起こり、さらに信仰を疑うことになる。
また、強い信仰心を持ちつつ、その中でも自らが正しいと思う道を進む者もいる。彼女は厳しい戒律に反してでも、何が一番大切なのかを客観的に捉え、生きるのである。
そう、本編中でも言っていたように「何が幸せかは誰にも分からない」のである。それが強い信仰心を持ち、自らの貞節を守り、神の下に生きることなのか、どういう形であれ新たな命に対して母親として子供と肌身を晒して生きることなのか。それとも全てを捨てて自由に生きることなのか。それは人それぞれである。
この物語のラストに、彼女らは、彼女らなりの幸せの解の1つを見つけることができたのだと思う。マチルダに会えたことは、思い返してみれば確かに神の救いかもしれないが、そこから先は彼女らとマチルダらの奮闘による、非偶然的なものであろう。
ストーリーとしてヴィルヌーヴっぽさもあったが、最後に良い結末になってよかったと個人的には思った。ヴィルヌーヴよりはストーリーに鮮やかな色合いがある。それにしても、これが実話に基づいているということは衝撃的である。