劇場公開日 2017年8月5日

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「闇に葬りかけた史実に灯をあてた秀作」夜明けの祈り 突貫小僧さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5闇に葬りかけた史実に灯をあてた秀作

2017年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

作品が始まって直ぐ「この作品は史実に基づいています。」というテロップがでます。最近、史実に基づいた…と謳う作品に遇います。何かこれが私自身の色んなレビューを書く「壁」になっています。「これは、事実なんで」と言わんばかり。何処までが事実なんだろうと思ってしまいます。
 過去に起こり得たことは、闇に葬るのではなく、真正面から向かい合わなけれならないであろう。
 今回の作品、邦題が極めて美しい情景のイメージを受けましたが、その内容は物凄く惨く悲しい作品であった。作品を見終わって、修道院の院長マザーオレスカという女性。かなり憎みました。日ごろから、神への愛や信仰の祈りはなんであったのか。
女性が「子供を産む」ということが、いかに魂の救済であり、「神からの授かりもの」ではないのか。しかし、彼女だけを恨むのは全く間違ったことであると感じた。一番に恨むことは、人間がいかに醜い争いをしたこと。過去の人間の悪行が愚かであったことを未来に向けての平和ある秩序ある地球、世界にすることが我々の使命であることを訴えかける(多少気分が悪くなる内容ではあったが、此処も史実らしい。)作品であった。
やはりズシリと来る作品ではあったのだが、疑問に残る所はある。フランス赤十字に働くマチルドが上の者に事実を述べ、修道院に起こった出来事を訴え、助けることを進言しなかったのかということである。サミュエルも同じ。
閉鎖的であった修道院が、ラストあまりにも開放的で眩い修道院になったことへの場面は、落差が大きく過剰演出ではないかとも思った。(これも史実に基づいたことなのか。)
無残にも亡くなってしまった神の子が、ただただ希望の灯を浴びていることを祈るばかりである。

突貫小僧