「ジャームッシュにしか成しえない特殊な時間と空気の紡ぎ方に見惚れてしまう」パターソン ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャームッシュにしか成しえない特殊な時間と空気の紡ぎ方に見惚れてしまう
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今の時代、こんなにオーソドックスでありながら、これほど心動かされる映画が生まれ得るものなのか。俄かには信じがたい偉業を成し遂げたのはこの男、ジャームッシュだ。彼の持ち味であるフフと思わず笑みが漏れるような空気感を湛えつつ、一見地味とも思えるこの作品の世界観を、一瞬の退屈すら感じさせないまま、観客の胸に大切に贈り届ける。ノートに書き留めた詩の一片が日々の心の動きに合わせて徐々に推敲されていく様はまるで「修行」や「道」のよう。その流れる滝のような思考過程を落ち着いた心持ちで観客に追想させてくれる。思えば町の名も、そして主人公の名もパターソン。彼は多くの偉人を輩出した町のいわば化身でもある。バスも壊れ、ノートも失った彼。いつも同じルート、軌道を回り続ける彼が、最後に全く別の世界からやってきた旅人と邂逅を遂げる瞬間が愛おしい。ジャームッシュと永瀬正敏の関係性もまた、これと全く同じなのかもしれない。
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