「奇妙な後味」パターソン 丈介さんの映画レビュー(感想・評価)
奇妙な後味
バスの運転手をしながら日々詩を書いている男と、その彼女の1週間を淡々と描く。
体を寄せ合いながら眠っていて、決まった時間に目が覚めたら彼女の体臭を嗅ぎ安心して起き、昼ご飯を携えて会社に行き、バス会社の同僚と会話をし、乗客のおしゃべりなど聞き、帰ってきてから彼女と夕飯を食べ、犬の散歩に行きつつバーに寄りビールを一杯飲む。
その毎日の繰り返し
彼女との関係は、安心感を感じさせるセリフや詩が出てくるが、画面から感じる印象は、薄いワイングラスの中のような変な緊張感を感じる。
彼女との関係もそうだ。
彼女の好きな黒と白のデザインや、やはり黒と白のデザインが現れるケーキや、思いつきのようなカントリーのギターや、気分的な料理など、主人公はどれもいまいち気に入ってないのではないか?と伝わってくる。
彼の詩を世に出すべきだという彼女の考えにも、実は全く賛成していない。
彼の大事な詩のノートが犬に噛み千切られてしまうが、そのシーンから受ける印象も、彼は彼女のせいだと思っているのではないか?と感じた。
でも、彼女とやっていこうとしている彼がいて、
余計なお世話だが、本当にそれでいいのか?と、つい思ってしまった。
どのシーンも微妙な心の揺れのようなものを感じたが、それは主人公の繊細な表情や仕草からで、
この俳優スターウォーズを観た時にはわからなかったが、とてもいい。
また偏見だが、セックスのシーンがないのがよかった。
また、双子がそこかしこに出てくるがあれはどういうことなのだろう?なにかのモチーフ?
彼女は昔のホラー映画のヒロインと双子、主人公の男は街かバスそのものと双子、なのかな?と考えてみたものの、どうもピンとこない。
最後の永瀬のシーンは独特で、あれがあってよかったのかどうか、よくわからない。
それまでの雰囲気や曲調とはガラリと変わって、むしろわざとゴツゴツした会話と雰囲気を無理やり投入したように見え、メッセージを伝えようとしているというよりも、敢えて異質なものを放り込んでその雰囲気のまま終わらせた印象。
あとベンチで後から座る永瀬だが、主人公との位置が近いよ、と思うのは私だけか。
いずれにしても、ただ心地のいいだけではない、奇妙な後味を残す映画だった。1週間経っても、まだああだこうだ考えているのだから。