「わんこの平坦な大冒険?」トッド・ソロンズの子犬物語 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
わんこの平坦な大冒険?
一匹の犬が辿る人間世界の出会いと別れの話
この作品はブラックユーモアで溢れている。
主人公の犬(ダックスフント)は飼い主を変えながら安息の地を探す旅をするのだが、行く先々でアクシデントに遭遇してしまう。
犬の存在感と可愛らしさは素晴らしかった。特に喜んだり、悲しんだりせず淡々と出来事に身を任せて表情も変わらないのだが妙に愛らしいのだ。
ただ居るだけので癒される存在だが人間に振り回されて不憫でもある。動物をペットにする事の問題点を監督は描きたかったのかも知れない。
避妊手術をしたり爆弾を付けられたり、人間の都合で物事が進むのだが、犬はマイペースで落ち着いているのでなんとも不思議な雰囲気の映画だった。
犬以上に不憫なそれぞれ病ん飼い主たちもどことなく憎めない人ばかりだ。
この作品は犬の物語であると同時に飼い主の物語でもある、犬以外の共通点が全くなくそれぞれ独立したストーリーの短編が続いていく作風で一つ一つの話が個性的だ。
病気の子供
保健所の女医
映画の教授
最期が近い老婆、
どの人物も個性的であり現状に不満が有り、もんもんとした生活を送りながらも犬との出会いで癒しや踏み出す勇気を与えられる。
それらの出来事を全然ドラマチックに描かず、平坦に話が進むので若干眠くなってしまったが終盤のある出来事で一気に目が覚めた。
えげつないほどのリアルさで映したこのシーンは誰もが驚愕するだろう。
ブラックユーモアと言われてもこの展開を笑える人がいったいどれだけいるだろうか。鑑賞後、微妙な気分で家に帰った。
犬を飼っている人にはおススメできないが、何ともゆるい雰囲気の脱力系映画を見たいと思う人にはいいのかも知れない。
かわいいとかわいそうを一気に味わえる作品だと思った。
劇中セリフより
「『もしも、どうする』を考えろ」
物語を作るに必要な事
このセリフを言った教授は、生徒から完全になめられているし脚本家としてもダメダメで、最後は過激な行動に出てしまう。
存在意義を見失わないようにしていきたいと思った。