「シンプルで挑発的。一筋縄ではいかない純真さと悲しみが際立つ。」トッド・ソロンズの子犬物語 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
シンプルで挑発的。一筋縄ではいかない純真さと悲しみが際立つ。
冒頭の“雲の形”からして非常に挑発的だ。この人、まったく変わってないなと嬉しくなる。そんなソロンズ映画ではいつも、社会の回転速度から弾き出された特異なキャラクターたちが、自分を偽らず、それぞれのやり方でなんとか人生と折り合いをつけようとする姿が描かれる。一つの物語を垂直に掘り進めるのではなく、複数のキャラを空間的に捉えて点描するところも特徴的。今回だって一見バラバラなオムニバスの物語が、不意に同一のテーマ上で繋がっているように見えてしまう不思議さがある。ポイントは“ダックスフント”。これが各キャラに寄り添い、その人の心を代弁し、過去や先行きを象徴するメタファーとなり、時に身代わりとなり・・・。そのいたいけな存在、愛らしい視線が介在することで、純真で、逃げ場がなく、どこか悲しく、生きにくさに満ちた人々の物語は仄かな強度を持ち始めるのだ。ただし愛犬家には強烈すぎる場面もあるのでご注意を。
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