「ソロンズは、ひたすら誠実に世界を見つめている。」トッド・ソロンズの子犬物語 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
ソロンズは、ひたすら誠実に世界を見つめている。
犬好きの人にはご愁傷様ですが、ソロンズが普通に感動の動物ものを撮るわけもなく、絶望ワールドが淡々と綴られる通常営業のソロンズ節だ。
だがソロンズを「悪意のひと」と捉えるのは違うのではないか。確かにどのエピソードも人間のろくでもなさをえぐって陳列している。が、そこには世の偽善への怒りが感じられ、その上で個人を善悪でジャッジしない公平性をも獲得しているのだ。
とりわけ過去作で酷い目にあわせまくったドーン(本作ではグレタ・ガーウィグが演じた)にあんな甘酸っぱい瞬間を与えるなんて、そりゃ反則だろうと悶絶するくらい一本取られた。観客を嫌な気分にさせたいだけの監督ならあんなシーンを作れるだろうか。
この世はとかくクソ。それがソロンズから見た世界の姿なのかも知れない。しかしクソ溜めにも小さな花が咲くことはある。すぐ枯れる花だったとしても、やはりそれは等価なのだと教えてくれる映画でもあるのだ。
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