「原作とアニメ版に敬意を払いつつ、ご新規さんにも配慮するということをそれなりに出来ている。」ゴースト・イン・ザ・シェル ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
原作とアニメ版に敬意を払いつつ、ご新規さんにも配慮するということをそれなりに出来ている。
そういうのはリメイクやリブート作品でのノウハウが積み上げられているハリウッドではスタンダードになりつつある、というのが個人的な印象。悪くは無いが若干食傷気味であることをゴーストが囁いている。
作品の志向としてはあたかもダイジェストのように既存のシークエンスを実写/CGIに落とし込んでいて「やりたいこと、見せたいもの」への思いが溢れている。それはまあいい。その上で謎のロボコップ要素を持ち込んだことはくだらないアイデアだと思える。要するに主人公の消されたアイデンティティを取り戻す過程をメインストーリーにしてしまったことでかなり矮小化してしまったと思えるからだ。設定を変えてなおかつそのミラ(素子)を掘り下げることの無意味さは言うに及ばない。
またあの設定で「少佐」と呼ばれていることもおかしいし、なぜ完全義体の最初の成功例が公安なのかと。ついでに言うとあの小狡いオムニ、もといハンカの社長なら素子に「ハンカ社の経営陣に手出しできない」くらいのことはやるはずだが笑。
実写/CGIでの成果の一つとしては素子の完全義体を"いい感じに"艶かしくしたことだろう。元がそうなんだから仕方ないのだけどあのスカヨハのムッチリとした重量感は悪く無い。細身なのに義体ゆえの重量感を表現するのはアニメ版で腐心されていたことで、その狙いは今作でもスカヨハの演技に反映されていたが、断片的で貫かれてはいなかった。たぶんやり過ぎると滑稽に見えるからかもしれない。彼女は原作やアニメ版を一切知らなかったそうで、そういう彼女のアプローチは今作のコンセプトには整合していたと思う。マンガ的なイメージから脱却させた上で、現代的な「人間性の回復」を扱っているということになるのだろう。まあ問題は「それを攻殻でやるのか」になるのだけど。
吹き替え版でのキャストが発表された時点で字幕版のことは忘れたが、まさかたけしの滑舌の悪さを英語字幕で補う日が来るとは。そしてあの芸者ロボは『妖獣都市』なのかな。