劇場公開日 2018年7月7日

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「つたない」菊とギロチン 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

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0.5つたない

津次郎さん
2020年7月11日
PCから投稿

時代の表現が拙くて現代人が昔の服を着て時代劇を演じている感じがありました。衣装もまっさらで庶民の底辺感が欠けていたと同時に、あからさまなセット、間に合わせなロケーションにもげんなりしました。

活動家の闘争、その躍動を描き出そうとしていることは判りましたが、粗野なだけの類型的な人々に見えました。野望のある人間は、かならず坂本龍馬型で語られるわけです。

女相撲は痩身ばかりで女郎の集団に見えました。興行の様子に臨場がなく、躍動もなく、観客の囃し立ても学芸会でした。いったい何なのかと思える、長い長い相撲観戦シーンでした。ふんどしを鳥居に干していましたが、いいんでしょうか?

台詞は情感過多ですが、話はたいへん解りにくいものでした。編集もかなり入り組んでおり、前後の脈略が見えず、かれらがなぜ、なにを怒っているのかが掴みにくかったと思います。また、カメラもやたら動きます。手持ちもありました。ベテランにしてこの素人っぽさ、わざとなのでしょうか?

愁嘆場が、何度も出てきます。
朝鮮人女相撲が受けてきた差別を披瀝する、ヒロインが辛酸と理想をぶちまける、東出昌大が満州国の夢を語る──「貧乏人も金持ちもいねえ」とかなんとか、官憲が朝鮮人女相撲を叩きまくる、書生が夫から花菊を取り戻そうと殴り合う、東出昌大の獄中の絶叫、死んだ女相撲の骨を砕く頭領、憲兵に襲撃される女相撲、エピローグの「その後」等々。

いずれも、おぞましいほどイキっていて、無理無理にペーソスを現出させようとしていました。熱い人が、承認欲求に駆られながら撮っている、という感じだけは、ひしひし伝わってきました。
話を解っておらず、心を動かされてもいないので、愁嘆が早すぎるのですが、それは終局でも同じことでした。
総じて映画に認めたのは、押しつけがましい自己弁護、お涙頂戴、エクスキューズ、Abused womanなどでした。

女相撲が死霊の盆踊りの踊り子であるというなら、あるいは、活動家がDolemiteであるというなら、私もこの拙さを解せるのですが、映画は志の高そうな気配を持ち、役者達は激動の時代を熱演で表現しようとしていました。

映画が、志の高そうな雰囲気を持ち、且つ役者が熱演で応えているばあい、親切な観衆が、勝手に寓意やシンボライズや熱情を汲み取ってくれるばあいがあります。すると周囲も感化され、あながち冷評を下すわけにはいかないという気分にもなってくるわけです。

すなわちクリエイターは、主題やシリアスな空気感やポリティカルスタンスによって、大衆の批判を免れる立脚点を持ってしまうことがある、と思います。たとえば若松孝二監督には意外にいい映画がありませんが、パトスみたいな無形のもので地位が確立されているわけです。いうなれば根性も評価されるのが日本映画の伝統だと思います。

また、この映画は活動家の高い志を執拗に強調しているにもかかわらず、一方で木竜麻生や女相撲の女優陣や遊女にエロチズムを付帯させています。こういう二律背反をする演出は居心地がよくありません。活動家の野望を主題にしながら、裸も楽しんでね──ってのは秘宝館みたいな田舎くさい娯楽性だと思いました。
いずれにしても、革命は何を目論んでいるのか、なぜ女相撲と権謀が関わっているのか、なぜ菅田俊の憲兵がどこにでも現われるのか・・・まったく理解不能──個人の感想ですが、ほんとに酷い映画でした。

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津次郎
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