劇場公開日 2017年2月25日

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「3層構造なのにあっさりと見れるのは…」素晴らしきかな、人生 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

3.03層構造なのにあっさりと見れるのは…

2025年8月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

子供をなくし人生に絶望した男が主人公。クリスマスシーズンに、やけを起こし自転車で車に向かって逆走したりする。
それを何とか救いたいと奔走する、会社の重役3人と、彼らに雇われた女探偵。
この時点で、主要キャラが5人。

そして、主人公が投函した手紙を、探偵が盗み出し、勝手に読んでしまう。あて先は「愛」「時間」「死」届くはずのない意味のない手紙。
重役3人は、役者を雇って主人公にコンタクトを試みる。受け取った手紙に返事をする形で、死と愛と時間がそれぞれ彼に会いに来る。その3人は概念的な存在なので、彼以外には見えていないというトリッキーな設定。そのためだけに、群衆を仕込んでいたりもする。

さらに、心に傷を持つ人を救うグループカウンセリングの、主催の女性。彼女自身も子供を亡くしたばかりで、それぞれの心の傷に寄り添う。そこに顔を出す主人公に、強い関心を持ち、ゆっくりと心を解きほぐしていこうとする。

「死」「愛」「時間」それぞれを男の前で即興に演じる劇団員と、カウンセリングの主催女性。
これで、主要キャラが9人。

映画は90分チョイなので、見ていて「納まるのか?」という不安がよぎります。
結論から言うと、スッキリと破たんもなくまとまり、心に温かいものが残る映画でした。

キャストの豪華さと、爽やかな感動。それが見られるだけで満足の出来栄えと言いたいところですが、残念なのは、それ以上の何か、見た人の人生を動かすほどのパワーを感じないことです。決定的な何かが欠けていると思えるのは、そのトリッキーな設定を、見る人に全部バラしてしまっているからじゃないでしょうか。ウィル・スミスの内省的な演技も、葛藤が写りにくいと思います。

ただし、この映画にはもうひとつ大きな仕掛けがあります。

これだけの人数を映画に出して、きちんとまとまったのは、それぞれのキャラが立っていたことと、豪華キャストの実力によるところが大きいでしょう。

フランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生』は見たことがありませんが、自殺願望の主人公、クリスマス、天使という設定は共通しています。ただし、原題が「Its a wonderful life」と「COLLATERAL BEAUTY」全く意味もニュアンスも違うタイトルで、たまたま設定が似ていることから、無理くり付けた日本語タイトルのようです。

ただし、主人公に接触してくる天使(と言えなくもない存在)は、この映画ではただの雇われ俳優なので、「計画」が破たんする可能性を想像してしまい、かなりテイストの違う映画のようです。この映画が成功したかどうかは私には分かりません。キャプラ版を見ていないので。

うそつきかもめ
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